しろありNo.167
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43Termite Journal 2017.1 No.1673.3 AE法によるシロアリ検知 AE法は, シロアリが木材を摂食しているときに発生する超音波領域の弾性波を検出することによりシロアリを検知する手法である。 従来のAE法では, AEセンサを直接木材に貼り付けて, シロアリの摂食音を検知しているため, 短時間に広範囲にわたるシロアリ探査は困難である。シロアリ探査の利便性を考えると, AEの非接触測定が不可欠となる。シロアリの非接触測定の可能性を検討するため, 事前作業として, シロアリ摂食音の音圧レベル, 周波数スペクトラムなどの基本データを採取した。その後, 接触式AEセンサと非接触式マイクロホンの2種類のセンサを用いて, 比較検証のため次の項目について試験確認した。 ① シロアリが木材摂食時の木材表面のAEセンサによる音圧とマイクロホンによる空中音圧レベル, 卓越周波数, 摂食頻度の測定 ② 空中放射されたシロアリ摂食音の距離減衰特性の測定 以下, AE法によるシロアリ摂食音の検証試験は, イエシロアリを対象としている。1) 事前調査結果 写真3にシロアリが摂食しているシロアリ試験体のAEセンサによる摂食音測定状況, 写真4に超音波漏れ試験器による摂食音確認状況を示す。AEセンサシロアリ試験木材シロアリ試験木材リーク試験器マイクロホンリーク試験器 ① シロアリ摂食音の音圧, 周波数スペクトラム   シロアリの摂食音のAEセンサによる測定結果を図7に示す。約0.02Pa以上の音圧レベルのAE信号が1秒間あたり20回程度発生している。また, AE信号の周波数スペクトラムの卓越周波数は, 30kHz〜50kHzの範囲であり, 最大音圧レベルは0.56Paであった。 ② 超音波漏れ検知器によるシロアリ摂食音の確認   検出周波数帯域38.4kHz±2kHzの超音波漏れ検知器を使用し, 微弱であるがシロアリの摂食音を付属マイクロホンにより検知できることを確認した。 AEの音圧レベルと周波数スペクトラムの卓越周波数のデータは, シロアリ検知器を設計する上で有用なデータとなるとともに, マイクロホンによりシロアリ摂食音を非接触で検知する可能性を示唆している。非接触測定は, 操作性, 取扱い上, 現場検査の有力手段となり得る。そこで, 広帯域(20Hz 〜100kHz)で, かつ, 高感度(158mV/Pa :at 40kHz)なマイクロホンCO-100K(三研マイクロホン社製)を使用し, 次の点に留意してシロアリ検知の検証実験を実施することとした。 ・ 空気の音響インピーダンスは, 木材に比して, 10-3程度と桁違いに低いため, 木材内部から空気中へ放射される音(透過音)は, 約1/500(-54dB)程度に減衰すると推定される。 ・ 空気中の音圧は, 距離に反比例する距離減衰と音の周波数の2乗に反比例して減衰する周波数依存性がある。写真3 AEセンサによる測定状況写真4 超音波漏れ試験器による確認状況

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