しろありNo.167
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51Termite Journal 2017.1 No.167リフォルニア大学)を主催者として準備が進められたが, Vernard Lewis博士は残念ながら会議には欠席され, 当日はBrian Forschler博士および吉村 剛博士が座長を務められた(写真3)。講演はキャンセルされた1件を除き11件で, 会議の性質上, シロアリ類に関する発表は様々な分野のセッションに分散し, 本セッションではシロアリ以外の木材害虫に関する発表の占める割合が比較的高いという印象を受けた。以下, 各講演者の発表概要を, 要旨(https://esa.confex.com/esa/ice2016/meetingapp.cgi/Session/25898にて閲覧可能)の内容を中心に紹介する。きの際には, 製品の同一性確保, 環境・健康面におけるリスク評価, 効能の実証, 薬剤耐性獲得の対策などの多数の項目に関わる多量のデータ蓄積が要求される。大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)の交渉が進む中, アメリカ市場とEU市場間を往来する木材保存剤についての相互理解が今後必要となるであろうが, 登録要件には様々な相違点が存在する。本発表では, 標準効能試験の主な相違点について, 長短所の観点からの比較がなされた。結言として, 木材保存剤の効能に関する消費者のTTIPへの不信感を払拭するためには, EUとアメリカ間における規格の調整が必要となることが指摘された。 Lara Maistrello博士(モデナ・レッジョ・エミリア大学)は, 「無機−有機ハイブリッドポリマーによる革新的木材処理―乾材シロアリ用標準試験プロトコルの提案」を行った。近年, シロキサンで官能基化したポリアミドアミン(PAAs)による新たな薬剤処理技術が開発され, 特許を得た。PAAsはエタノールアミン(EtA)や3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を求核的にN,N−メチレンビスアクリルアミド(MBA)に付加することで合成される。EUやアメリカの木材保存の現状では, 既存の防蟻試験規格の対象は地下シロアリ類に限られる。木材害虫としての重要性が高まりつつある乾材シロアリ類には, 行動特性の大きな差異から, これらの規格を適用することはできない。本研究では, 組成の異なる3種類のPAAs剤の木材保存剤としての効能を, EN 118規格に基づき地下シロアリReticulitermes lucifugusを使用して検討した。さらに, 乾材シロアリKalotermes flavicollis用の試験プロトコルを開発した。その結果, いずれのPAAs剤も, R. lucifugusおよびK. avicollis両種の防除への有効性が認められた。低有効濃度, 低負荷でありかつ木材への高い固着性を有するPAAsは, 革新的な防蟻剤として期待できる。 Lee Wonhoon博士(大韓民国農林畜産検疫本部)の欠席により, 講演「大韓民国への外来甲虫類の侵入:1996年から2014年における国境での捕獲と発生の比較」はキャンセルとなったが, 要旨の内容を以下にまとめる。近年の経済成長により, 韓国では装飾品などの木材製品の消費者需要が増加している。その結果, 意図的または非意図的に, 外来昆虫相が国内に絶えず侵入している。本研究では, 甲虫類の韓国国境におけ写真3 セッションルーム前にて(左から吉村 剛博士, Brian Forschler博士, 筆者) Rudy Plarre博士(ドイツ連邦材料試験研究所)は, 「構造用木材の食害昆虫防除のEU規制, TTIPはこれに準拠できるか?」と題し, EU殺生物性製品規則について総括した。構造用木材における木材穿孔甲虫類の防除は, EUでは一律に規制されている。EU市場向けの木材保存剤の登録および許可は, EU殺生物性製品規則528/2012に基づいて行われる(物理的防除などの非化学的防除手法は国レベルで個々に規定される)。手続

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