しろありNo.167
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4Termite Journal 2017.1 No.16745. JH生合成遺伝子の発現解析 幼若ホルモン(JH)は, セスキテルペノイド骨格を有しており, 脱皮や変態, 休眠などの多面的な役割を担う, 昆虫にとって最も重要なホルモンの1つである26)。上述した通り, シロアリの兵隊分化においても中枢因子であることが知られており, 兵隊分化には職蟻の体内JH量の上昇が必要である27, 28)。実際に, 職蟻にJHあるいはJH類似体を投与すると, 人為的に前兵隊分化を誘導することが可能である29)。しかしながら, 自然条件下での前兵隊分化を観察することが不可能だったために, 内因性のJH量の変動は不明だった。 昆虫一般に, JH生合成経路は段階的な酵素反応により成り立っており, 前期過程と後期過程に分けられる(図2)。 前期過程は多くの動物群で保存されるメバロン酸経路であり(図2a), 後期過程はJH合成に特異的な反応経路である(図2b)。各過程を構成する酵素アセチルCoAアセトアセチルCoA3-ヒドロキシ-3メチルグルタリル-CoAメバロン酸ホスホメバロン酸ジホスホメバロン酸 イソペンテニルニリン酸ファルネシルニリン酸ファルネソールファルネサールファルネセン酸ファルネセン酸メチル幼若ホルモン(JH) ファルネシルニリン酸アセトアセチルCoAチオラーゼHMG-CoAシンターゼ HMG-CoAレダクターゼ メバロン酸キナーゼホスホメバロン酸キナーゼジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(DD) ファルネシルニリン酸シンターゼFPPピロホスファターゼ ファルネソールデヒドロゲナーゼファルネサールデヒドロゲナーゼJH酸メチル基転移酵素(JHAMT) MFエポキシダーゼ(CYP15A1) ジメチルアリルニリン酸 イソペンテニルニリン酸イソメラーゼ前期経路 後期経路 (a) (b) 図2 昆虫における幼若ホルモン(JH)の生合成経路。JH生合成経路は,前期経路(a)と後期経路(b)により構成されている。各ステップで働く酵素は太字で記す。

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