しろありNo.174
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によりネバダオオシロアリと再同定された。アメリカオオシロアリについては, 輸入材から発見された記録がいくつかあるが例えば5, 6), その一部はネバダオオシロアリであった可能性もあると考えられている。オオシロアリ及びネバダオオシロアリは, 一般的に建築物への加害はほとんどないと云われるが, 秋山7)は高知県足摺岬より北西約30kmの三原村でオオシロアリによる木造物置倉庫への被害と近辺の山林における生息確認を報告している。 これら2種は, 兵蟻の形態的特徴で区別することができる。森本8)の日本産シロアリ種の兵蟻検索表によると, まず脚の付節を下からみると5節(第2節は小さくて第1節に被われ上から見えない)あることでダイオウシロアリ科に分類される。さらに, オオシロアリの場合は, 左大顎の端歯から最初の切れ込みまでの距離が, 第1縁歯端から2番目の切れ込みまでの距離と等しい。頭部は丸く, 眼は黒い, などが特徴として示されている(図1)。検索表では, この特徴に当てはまらない種としてネバダオオシロアリとアメリカオオシロアリの形態的特徴が続けて記載されている。当該検索表では有翅虫の検索表もあるので興味のある方は参照されたい。7森林研究・整備機構 森林総合研究所 神原 広平株式会社 友清白蟻 山辺 利成森林研究・整備機構 森林総合研究所 大村 和香子山口大学 創生科学研究科 竹松 葉子Reports1. はじめに 日本国内で記録されるシロアリは現在24種いるが, そのなかには, 海外からの資材や家具などの移動に伴い人為的に導入されて, 定着した外来種が含まれている。例えば, アメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor), ハワイシロアリ(I. immigrans), シュワルツカンザイシロアリ(I. schwarzi)やイエシロアリ(Coptotermes formosanus), ゲストロイイエシロアリ(C. gestroi), カンモンシロアリ(Reticulitermes kanmonensis)などである。とくにイエシロアリは, 「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されており, 今ではアフリカやアメリカへも分布域を拡大している。 オオシロアリ(Hodotermopsis sjostedti)が属するArchotermopsidae(以下, 本稿ではダイオウシロアリ科と称す1))のシロアリ種では, ネバダオオシロアリ(Zootermopsis nevadensis)が外来種であり, 兵庫県川西市の山林で局所的に定着が確認されている2, 3)。このような局所的にしか定着が確認されていない種であっても, 日本国内での物流に伴い今後分布域を拡大する可能性が想定される。本稿では, 人為的な移動の事例として, 愛媛県で建築資材から発見されたオオシロアリについて簡単に報告したい。2. 日本に生息するダイオウシロアリ科の種と特徴 日本に生息するダイオウシロアリ科のシロアリ種には, オオシロアリとネバダオオシロアリの2種がおり, これらは林内の湿った倒木や切株などに大きな坑道を作って生息している。 分布は, オオシロアリが台湾, 中国南部, ベトナム北部をはじめ, 日本国内では奄美大島, 徳之島, 中之島, 種子島, 屋久島, 鹿児島県大隅半島南端部, 高知県足摺岬と報告されている4)。一方, ネバダオオシロアリはアメリカ太平洋沿岸域を原産地とし, 上記のとおり日本では兵庫県川西市の山林のみで定着が確認されている。本種は, 発見当初は同属のZ. angusticollis(アメリカオオシロアリ)と報告されていたが2), その後, 森本3)3. 愛媛県で発見されたオオシロアリ 愛媛県松山市において, ACQ(銅・第4級アンモニウム化合物系)加圧注入処理アカマツ材から, シロアリによるものと推定される被害痕が発見された。被害材を切断したところ, 被害は心材部に集中しており, そこから体サイズの大きなシロアリが発見された。被害材は, (有)愛媛防虫ランバーの清水氏に引き渡された後, 材末端から5cm間隔で切断したサンプル4つが(株)友清白蟻の山辺氏のもとへ持ち込まれた。サンプルからは, 兵蟻が採取できたため, 上記の検索表に従って分類したところ, 付節及び頭部(大顎を含む)の形態的特徴からオオシロアリと同定された(図2)。 被害材がACQ処理材であったことから, 本種による報文愛媛県松山市で発見されたオオシロアリについて

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