88材への加害時期が懸念された。そこで, 山辺氏のもとへ持ち込まれたサンプルのうち, 端部(0cm)〜5cmと10cm〜15cmの2つを森林総合研究所に送って頂き観察したところ, 被害箇所である坑道周辺にACQ処理に伴う薬剤の浸潤を示す顕著な着色がみられた(図3上)。このことから, 当該材は既にオオシロアリにより被害を受けていたアカマツが製材され, そのまま加圧注入処理されたと考えられた。被害材断面のうちシロアリの食害を受けた部分をImage Jを用いて二値化し被害面積を求めた後, 断面積で除して被害面積率を算出したところ, 被害面積率は材端部から内部へと進む図1 オオシロアリ(左)とネバダオオシロアリ(右)の兵蟻頭部形態(参考文献8)図1. 32を改変)図2 被害材から採取された兵蟻の付節(左)と頭部(右)形態 につれて減少していた(図3下)。このことから, 主要な被害箇所は加圧注入処理前に切除されていたことが窺えた。森林総合研究所で受け取ったサンプルの被害容積を, 各断面から得られた平均被害面積から推定したところ52.8cm3であった。採材部に対する被害容積率はわずか0.02%であったが, そこから計186頭の個体(擬職蟻と幼虫を含む)が採取された。採取した個体のうちいくつかは口器に固化した薬剤が付着していたことから(図4), 被害箇所である空隙には薬液が満たされたことが推察された。また, 発見時に生存個体が認められなかったが, これは, 加圧注入処理の工程で死滅したためと考えられた。 愛媛県からのオオシロアリの記録は, 酒井ら9)により南宇和郡城辺町山出(現在の愛南町緑乙)でライトに飛来した有翅虫の報告がある。酒井ら9)は, 「発生源は確認できなかったが, 本種の有翅虫が長距離飛行をするとは考えられないので, 周辺近くで発生していることは間違いない」と記載している。本報告では被害材の伐採地を特定するには至らなかったが, 南予地方で集積, 製材したものが松山市(中予地方)へと運ばれた可能性が考えられた。秋山7)と酒井ら9)の報告を鑑みても, 愛媛県南予地方及び隣接する高知県幡多地域の山林にオオシロアリが定着している可能性は高いと思われる。
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