しろありNo.174
16/50

1212効率が最適化されていて, 最短距離でより多くの食べ物に遭遇しそれを巣に持ち帰ることができる。名前とともに記している。正確な詳細が必要な場合には, 原文を参照していただきたい。過去に開催された学会大会のProceedingsは, PRTRGのWEBページに掲載されている(http://prtrg.org/past-conference.html)。また, 前回のPRTRG12に関する内容は, しろありNo.170(2018年7月)に記載されているため, そちらも参照されたい。なお, 本稿の文中で使用した写真については, 本学会大会運営部から参加者に配布されたものから許可を得て一部を選んで使用した。(下図写真は, PRTRG13の会場にて大会挨拶を行なっているPRTRG会長のSulaeman Yusuf教授)[01] シロアリのトンネル行動と採餌戦略Tunneling Behavior and Foraging Strategy of Subterranean TermitesNan-Yao Su (University of Florida, USA) シロアリの蟻道の幾何学的パターンの研究から, 蟻道の生成にはルールがあり, そのアルゴリズムに従ってシミュレーションできることがわかった。実験室内の2次元平面の空間にて, シロアリは推測航法やグローバルアウエイベクトルなどのローカルルールに従った予測可能な幾何学的蟻道パターンを作る。蟻道先端の堀削者のすぐ後ろの個体による渋滞緩和によってトンネルは形作られる。シミュレーション研究によって, シロアリの蟻道幾何学パターンは, 食物に遭遇するのに最適化されていることが示された。シロアリの主/分岐トンネル経路長が0.1の時, もっとも餌遭遇効率が高い。さらに, 枝の長さ分布の指数(α=0.5)は, 採掘1. 口頭発表◆基調講演◆Keynote Speech◆角田邦夫記念講演◆Kunio Tsunoda Memorial Lectures[02] シロアリの腸内細菌群集の食餌とcocladogenesisDiet and Cocladogenesis Shape Termite Gut Bacteria CommunitiesThomas Bourguignon (OIST, Japan) シロアリの腸内細菌群集構造は16SrRNAメタゲノム解析などによって明らかにされてきた。しかし, シロアリにとって親密な関係を保持して共進化する重要な細菌系統についての知見は無く, シロアリと腸内細菌群集のcocladogenesisについてはよくわかっていない。我々の研究では, 94のシロアリ種の腸内細菌群集の16SrRNAメタゲノムデータを用いた解析により宿主シロアリとともに共進化する細菌の系統を識別し, シロアリと共進化する腸内細菌の比率が摂食グループ間で異なるかどうかを調べた。その結果, シロアリの腸内細菌群集叢は, 食餌と宿主シロアリの系統に依存して決まることがわかった。シロアリと腸内細菌のcocladgenesisは, 本研究で対象とした細菌配列全体の48.13%で見つかった。木材食下等シロアリで17.60%, 木材食高等シロアリ(Termitidae)で59.18%, 土壌食シロアリで21.52%であった。食餌は細菌群集の組成と種の豊かさに影響を与え, 木材食シロアリでは土壌食シロアリよりも腸内細菌群集の細菌種が少なかった。また, 木材食シロアリの方が共進化する細菌の割合が優位に高いことがわかった。木材食シロアリでは腸内共生細菌は, リグノセルロース分解に関与し, 木材には不足している窒素源を宿主シロアリに供給している。土壌食シロアリでは腸内共生細菌は, 土壌中の有機物のペプチド成分の分解を行い, シロアリの窒素代謝には関与していない。土壌食シロアリは環境から様々な細菌を取得していると考えられ, 菌床栽培シロアリでは著しく細菌群集の構成が変わることがわかった。同じ木材食シロアリでも, 下等シロアリと高等シロアリ(Termitidae)における腸内細菌を比べると, 下等シロアリの方が共進化する腸内細菌の割合が少ない結果となった。下等シロアリはセルロース分解に関与する共生原生生物を保持しているので, 細菌が共進化する機会が少ないためではないかとも考えられる。より包括

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る