しろありNo.174
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cuvignathus 24コロニー, C. sepangensis 10コロニー, C.kalshoveni 2コロニー, C. travians 3コロニーについて, 各コロニーに属する兵蟻(n≧20)を形態計測分析に使用した。全長, 最大頭幅, 触角長などの, 最低17個の分類学的キーについて計測し, その値をつかって各々の標本間の形態学的な親和性を判別関数分析によって評価した。遺伝子解析では抽出DNAからCOII領域を増幅して用いた。その結果, C. sepangenisisとC. kalshoveniでは, 形態学的特徴が分離できず, 遺伝的関係も非常に近いことがわかった。このことから, C. sepangenisisはC. kalshoveniのジュニアシノニムであると考えられた。材害虫はすぐにそのような木に定着するとともに, その周辺にまた新たな個体群を設立する。この繰り返しによって害虫が蓄積し, アウトブレイク(大規模な害虫の発生)が引き起こされる。このような, いわば「害虫の台風」, についてこの研究で報告する。フィリピンのタクロバン市にて, 2013年11月に上陸した台風Haiyanは, 約1500万本のココナッツを破壊した。この木材の処理は, チェーンソー1本あたり10本の木を1日に処理できたとしても, 2年近くかかるという計算になり, 処理できない木材の存在は害虫を引き付けることになる。2014年3月, 2014年10月, 2015年3月に, 個体群調査を行った。その結果, カブトムシOryctus rhinocerosは腐朽した樹木やヤシの木に, シロアリのMacrotermes gilvusやMicrotecrotermes losbanosensisやNasutitermes lagunensisは倒れた木の切り株に生息していた。250地点での調査において, M. gilvusは爆発的に個体数を増やしていた。1515[08] 台湾におけるシロアリの分類学Termite Taxonomy in Taiwan Chia-Chien Wuら2名(National Chung Hsing University, Taiwan) 台湾でのシロアリの分類学的研究は日本の研究者が台湾に到着した20世紀初頭から始まった。しかし分子データは不足しており, これまでの台湾のシロアリの全体的な形態学的情報も十分に利用できない。そこで過去5年の間に, 台湾全土からの5700サンプルが収集され, すべてのシロアリは95%エタノールで保存した。種同定のため, 頭部と胸部の両方の筋肉組織からgDNAを抽出し, 16SrDNA, COI rDNA, COII rDNA, ITSの領域を増幅した。また兵蟻と有翅虫は最大頭長, 最大頭幅, 最大前胸幅, 最大前胸長, 触角節数, 最大前翅長, 最大後翅長を計測した。結果として, 台湾で5科14属にわたる22種のシロアリが見つかった。また, Macrotermes, Neotermes, Glyptotermesの3種において, 新種か新記録種であった。[09] フィリピンにおける木材害虫の発生: ◆セクション2:生態と行動◆Section 2: Ecology and behavior of termites頻繁な台風の結果としてOutbreak of Timber Pests in Philippines: As a Consequence of Frequent Typhoons Partho Dhang (Makati City, Philippines) この研究では, フィリピン列島を毎年通過する台風によって破壊される樹木の影響に着目した。台風は, 湿った暖かい条件で腐りやすい木を多く破壊する。木[10] Prorhinotermes flavusのゲノム: 高耐塩性のシロアリThe Genome of Prorhinotermes flavus: A Termite Species with High Salinity Tolerance Chung-Yen Linら14名(Institute of Information Science, Academia Sinica, Taiwan) シロアリではいくつかの種のゲノム配列が読まれている。2014年には湿材シロアリであるZootermopsis nevadensisのゲノム配列が初めて決定され, そのサイズは562Mbと推定された。同年, 菌床をつくる高等シロアリMacrotermes natalensisのドラフトゲノムが1.31Gbと発表され, 2018年にはドイツのゴキブリBlattella germanicaのゲノムが2Gb, 乾材シロアリのCryptotermes secundusのゲノムが1.3Gbと発表された。進化的に異なる位置にあるそれぞれのゲノムを比較することによって, 化学的コミュニケーションに関連する遺伝子の進化と高度な社会化の関係を解明できる可能性がある。本研究では, 進化的にはM. natalensisとC. secundusの間に位置するProrhinotermes flavusのゲノムを解読し, そのゲノムサイズは約969Mbであった。P. flavusは, 他のシロアリ種がすぐに死んでしまうような高塩環境に耐えることができる。そこで, このシロアリの耐塩機構を解明するために, トランスクリプトーム解析も行った。

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