1616[13] シロアリの生殖虫を排除する方法に関する研究How to Confine Reproductives Using an Excluder for the Study of Subterranean Termites Sang-Bin Leeら3名(University of Florida, USA) シロアリは地中や樹木内で活動するため, そのままでは活動の観察が難しいことから, 二次元平面に展開した視認性の高い巣を用いた研究が行われてきた。また, 社会性昆虫は階級ごとに分業して活動しているが, 生殖虫の存在を制御できれば, さらに社会性昆虫の行動の理解が進むだろう。例えばハチでは養蜂において, 巣から女王を排除することが必要になる場合があり, 生殖虫とそれ以外の体サイズの違いを利用して行っている。そこで本研究では, シロアリでも階級ごとに異なる頭部の幅や高さの違いを使えば, 生殖虫を排除できるかどうかを検討した。イエシロアリCoptotermes formosanusの職蟻・兵蟻・女王・王が通過できる通路の最小通過サイズと頭幅・頭高の関係を調べたところ, 職蟻は0.7mm幅通路, 兵蟻は0.8mm幅通路, 生殖虫は1.0mm幅通路を通過することができた。頭幅は階級によって統計的に優位な差が存在する一方で, 頭高は職蟻や兵蟻は生殖虫よりも統計的に優位に小さかった。通路の最小通過サイズは, 頭幅よりも頭高とより正の相関があることがわかった。実際にシロアリのコロニーに0.7mm幅通路を用いると, 生殖虫を排除できたが, 1.0mm幅通路を用いると, 生殖虫は自由に行き来することができた。[14] シロアリの蟻道建築における行動パターンと 建築材料Behavioral Patterns and Building Material of Termite Shelter Tube Construction Bo-Ye Chenら4名(National Chung Hsing University, Taiwan) シロアリは自然環境下において, 様々な適応構造を建築する。本研究では, 3種のシロアリNasutitermes takasagoensisとCoptotermes formosanusとOdontotermes formosanusの蟻道壁の有機物量と, 蟻道壁の建築行動のパターンを調べた。蟻道壁に含まれる有機物の量は, 採取した蟻道壁1gを105℃で24時間乾燥させた後に測定した重量と, その後乳鉢で粉砕してから900℃で3時間燃やした後の重量及びさらに800℃で8時間燃やしたときの重量を使って求めた。蟻道壁内の有機物の量は, N. takasagoensis(95.32±[11] 腐朽・未不朽の餌におけるシロアリのフラスと[12] ベトナム北部の3つの川の堤防における糞の定量的解析Quantitative Analysis of "Termite Frass" and "Termite Droppings" Using Decayed and Undecayed Food Kumiko Kiharaら6名(National Institute of Technology, Kumamoto College, Japan) シロアリとシロアリ腸内微生物と環境微生物の関係を定量的に明らかにするために, 環境微生物による腐朽餌のコントロールと, シロアリの食餌量の定量化が必要である。そこで丸太材では難しい, 均一な腐朽を起こすことが可能な, 木材や濾紙からなる「擬似丸太モデル」を提案し実験に用いた。シロアリの「摂食排出活動量」を定量的に表す方法として糞数が有効であることを示した。京都大学吹上試験地にて腐朽させた擬似丸太モデルと未腐朽の餌をHodtermopsis sjosteditiに与えたところ, 未腐朽餌よりも腐朽餌で糞数や体重やシロアリ腸内原生生物数が増加するが, 削りかす(ここではフラスと定義した)と糞の量には相関がなかった。Odontotermes hainanensisの分布Distribution of Odontotermes hainanensis (Insecta: Isoptera) on Three River Dike Systems in the Northern Vietnam Ngo Truong Sonら2名(Ministry of Agriculture & Rural Development, Vietnam) 紅河・タイビン川・マー川は, ベトナム北部に広範囲の河川流域を形成している。これらの川では, 河床勾配が緩やかであるため, 川は蛇行し支流を形成し, 結果として長い堤防が形成されている。この堤防はしばしば決壊し, その原因として堤防におけるシロアリの営巣が着目されている。そこで本研究では, 堤防の土壌の環境要因(腐植量, pH, 塩分)とシロアリOdontotermes hainanensisの巣の密度の関係について解析した。その結果, シロアリ巣の分布には, 腐植量やpHの影響はなかったが, 土壌中の塩分は関係しており, 塩分濃度が0.98 %±0.53 %未満の領域にシロアリ巣が分布していることがわかった。
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