しろありNo.174
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2121[25] 都市域において保護されている古い樹木の シロアリ被害状況調査Termite infestation survey and baiting Formosan subterranean termite (Blattodea: Rhinotermitidae) of protected old trees in urban areas Yu-Yi Laiら2名(National Chung Hsing University, Taiwan) 本研究では, 台湾の台中にある4つの主要な樹種のうち, 保護されている228本の古い樹木を調査した(ガジュマルFicus microcarpa 66本, クスノキCinnamomum camphora 56本, マンゴーMangifera indica 54本, アカギBischofia javanica 52本)。調査は地上2mまでの範囲を1名が10分間観察してシロアリの侵入状況を記し, シロアリ個体を採取して大学にて種を識別した。調査樹木のうち94.7%は樹齢50年以上で, シロアリの侵入率は52.2%であった。侵入していたシロアリは7種類で, 侵入割合はCoptotermes formosanus 18.9%, Odontotermes formosanus 14.0%, Cryptotermes domesticus 4.8%, Reticulitermes flaviceps 0.9%, Neotermes koshunensis 0.4%, Glyptotermes satsumensis 0.4%, Coptotermes gestroi 0.4%であった。ひとつの木に2つの異なる種が同時に侵入している樹木が9本あり, 古い樹木は異種のシロアリに適する多様な場所を同時に提供できることが示された。生きたC. formosanusが採取できた11本のマンゴーをシロアリの活動をモニタリングする対象として選び, 地上部に2つと, 地下部に8つ, モニタリングステーションを設置して, 2週間ごとに観察を行った。設置材木が50%以上消費されていた場合には新しい材木を設置した。地上と地下で見つかるシロアリが同じコロニーかどうかを調べるために, ひとつの地上モニタリングステーションでシロアリを染色して, 染色されたシロアリの広がりを観察した。染色されたシロアリが見つかった地下のモニタリングステーションに0.5 %のヘキサフルムロンのベイトを適用した。シロアリがいなくなるまで, 1週間ごとにベイトの量を, 2週間ごとにシロアリの存在を確認した。シロアリのコロニーはベイト設置後, 6〜26週間で消滅した。Coptotermes属のような優先種がいなくなった後に他のシロアリのコロニーが侵入してくることが知られているが, 本研究でも, C. formosanusがいなくなった後には, Reticulitermes flavicepsとOdontotermes formosanusが地下のモニタリングステーションに侵入した。これらのシロアリにベイトの効果があるのかどうかはわからない。[26] スマートフォン画像を使用した深層学習による主要なシロアリ害虫4種の識別Smartphone Image-Based Identification of Four Major Termite Pest Species by Using Deep Learning Jia-Hsin Huangら7名(Institute of Information Science, Taiwan) シロアリは, 都市において無視できない害虫である。そして, 害虫防除の上では, シロアリの同定は欠かすことができない。しかし, シロアリの識別には専門知識が必要で, 同定ができるところに識別の仕事が集中してしまう。現代では害虫の識別に詳細な学習技術が使えるにもかかわらず, シロアリの識別に至ってはまだよく研究されていない。そこで本研究では, 台湾の様々な地域から主要な4種類(Odontotermes formosanus, Coptotermes formosanus, Reticulitermes flaviceps, Cryptotermes domesticus)のシロアリを集めて, スマートフォンでシロアリの多数の画像を取得した。シロアリの形状を明確に区別するため, 黒いパネルの上に円形仕切りをおいて内側にシロアリを入れ, アクリル製のステージの上から, 動いているシロアリの1000枚の連続写真撮影を行った。円形仕切り内に入れるシロアリは, 兵蟻だけの場合は5頭, 職蟻だけの場合は5頭, 兵蟻と職蟻の混合の場合にはそれぞれ職蟻5頭に兵蟻は3または5頭を入れて, 3回繰り返して撮影した。ただし, C. domesticusは兵蟻が少なかったので, 兵蟻を使う場合は3頭とし, 5回繰り返して撮影した。得られた画像は閾値で二値化してから, 個々のシロアリの領域ごとにマスクを作成し, スケルトン法によってシロアリに仮装骨格を与えて向きを識別しやすくしてから, ハフ変換を用いてシロアリの向きを一定の方向に回転して揃えた。その後でシロアリの存在領域を長方形にフレーム化して得られた画像は, 幅と高さが等しい正方形の画像になるようにゼロパディングによって調整し, 画像サイズを小さくすることで使いやすくするために各画像は130×130pixelsに縮小した。深層学習モデル(MobileNetV2)を用いてシロアリ を分類するシステムを実装し, 取得した画像を用いてモデルの訓練を行なった。その結果, このシステムの平均精度は, 兵蟻0.930, 職蟻0.936, 兵蟻と職蟻の両方のカーストの場合0.859に至った。O. formosanusとC. domesticusの兵蟻同士や, C. formosanusとReticulitermes flavicepsの職蟻同士は, よく混同してしまったものの, 取得画像枚数を増やすことによって改善が期待できる。本研究で行ったこの方法は, シロアリを自動識別するための新しい方法である。

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