応度を上昇して分散戦略を展開するのに重要な役割を果たしているという仮説を立てた。しかし, ネオテニックの発達についてはよくわかっていない。この研究では, 最大頭幅や前胸背板や触角の節の計測を行なうことで, Prorhinotermes flavusのネオテニックの発達を解析した。その結果3-7齢幼虫までは偽職蟻は, 無翅のネオテニックへの分化能を維持している。ニンフは退行脱皮によって翅芽をもつネオテニックになる可能性がある。25個のコロニーのカースト構成を調べたところ, 一次生殖虫は見つからず, 二次生殖虫と有翅虫とネオテニックだけが見つかった。このことからP. flavusは, 有翅虫分散戦略かネオテニック分散戦略の2種類をとっていると考えられた。有翅虫分散戦略コロニーにはネオテニックはほとんど見つからないが, ネオテニック分散戦略コロニーではネオテニックは生殖階級であって有翅虫やニンフはほとんど見られない。Prorhinotermesは系統学的には世界的な侵入種KalotermitidaeとRhinotermitidaeの間に位置しており, カーストの発達と分散戦略がわかれば, シロアリ侵入の研究に役立つだろう。響のある要因であった。職蟻の大きさは環境温度が増加するに従って減少し, ベルクマンの法則と一致していた。しかし, そのメカニズムの解明にはさらに研究が必要である。各個体の体サイズを増やすことに加えて, 社会性昆虫は超個体として存在することから, シロアリのコロニーとしてのバイオマス量の変化がベルクマンの法則と一致するかどうかはまだわからない。Transport of Microplastics from Surface into Soil by Termites Hiroki Yabumotoら3名(Kyoto University, Japan) プラスチックは便利であるが深刻な環境問題を引き起こしており, 特に, 5mmより小さいプラスチックはマイクロプラスチックと呼ばれ水環境で特に研究が進んでいるものの陸域環境についての情報は不足している。海よりも土壌の汚染がより深刻だという報告もあり, プラスチックによる土壌汚染の研究が必要とされている。土壌動物によるマイクロプラスチックの移行を検証するため, 土壌動物の代表としてシロアリを用い, 実験室内の容器において実験を行った。ポットは直径5.8cm高さ15cmで, 2種類のシロアリCoptotermes formosanusとC. gestroiを用いた。ポリエチレンPEとポリプロピレンPPの3サイズのマイクロプラスチック(1-5mm, 1-2mm, 0.5-1mm)と, ポリスチレンPSのブロック(2×2×1cm)を用いた。ポットに土とシロアリ とプラスチックを入れてから3週間後には, マイクロプラスチックは深さ3cmまで運ばれることを観測した。PEとPPでは小さい粒子はより深くに輸送され, 0.5mm未満の粒子も検出された。PSの場合には, シロアリがブロックを激しく壊して細かい粒子にしており, PEやPPよりもより深い層で検出された。このことからシロアリは, マイクロプラスチックの土壌表層から内部への輸送に関与し, より細かい粒子へとプラスチックを破壊しており, 素材や大きさに応じた効果があることが示された。シロアリがより小さいサイズにプラスチックを破壊し, 土壌内に残ることは, 土壌生物叢や土壌動物や植物に長期的な悪影響を与える可能性がある。2525[P10] 台湾の菌床栽培シロアリの体の 大きさはベルクマンの法則に従うか?Does Body Size Variation of Formosan Fungus-Growing Termite Fit Bergmann’s Rule? Wen-Jun Linら2名(National Chung Hsing University, Taiwan) ベルクマンの法則では環境温度が下がるに従って温度調整のために体サイズが大きくなるとされる。菌床栽培シロアリOdontotermes formosanusは台湾に広く分布しており, NCHU(中興大学)のシロアリコレクションに保存されている1,194個のコロニーを調べた。北緯23度と24度の線を使って台湾を南北に3つの地域に分け, 標高1500mまで300mごとに分け, 全部で15区分に区切った。各区分においてランダムに5コロニー以上が選ばれ, コロニーあたり5頭, 合計76コロニーから460頭の職蟻の最大頭幅を計測し, 緯度・経度・標高・気温・降水量などの生物と気象に関する19項目との関係性を調べた。職蟻の最大頭幅は1.03-1.67mmの範囲で, 平均1.35±0.01mmであった。頭幅と12項目の環境因子との間に優位な相関が見つかり, 緯度・標高・気温日較差では正の相関, 経度・年平均気温・最も暑い月や季節の最高気温や最も寒い月や季節の最低気温とは負の相関があった。特に最も寒い月の気温は最も影[P11] シロアリによるマイクロプラスチックの 表面から土壌中への輸送
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