しろありNo.174
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3030 近い種では似た生殖行動や認識システムを持っており, このことが種間交雑による遺伝子移入を引き起こす。しかしながら, シロアリにおける繁殖時の種の選択の好みや種間交雑の関係については, ほとんど研究されていない。ここでは野外観測と実験室内研究を合わせて, 2種類のシロアリReticulitermes flavicepsとR. chinensisの間にある繁殖における種の嗜好性が生殖戦略に及ぼす影響について調べた。その結果, 生殖ペアが種内であっても種間であっても, タンデム行動や交尾行動には優位差はないが, アログルーミング頻度については種内ペアよりも種間ペアの方が顕著に高かった。さらに遺伝的解析によって, 種内および種間のどちらの生殖ペアでも繁殖が行えることが示された。これらの結果は, Reticulitermesの2種類のシロアリが, 種間交雑を推進し遺伝的多様性を高める可能性があるタンデム行動や交尾行動において, 特別な種内嗜好はなかったことを示している。将来的にR. chinensisのより詳細なアセチル化の機能的役割を解明することにつながる。[P24] Reticulitermes chinensisにおける リジンアセチル化のタンパク質定量Proteomic Quantification of Lysine Acetylation in the Termite Reticulitermes chinensisYutong Liu ら2名(Huazhong Agricultural University, China) タンパク質のリジンアセチル化は可逆的な翻訳後修飾で, 生理的な機能の上で広く中心的な役割を果たしている。この研究では, Reticulitermes chinensisのアセチル化部位の包括的な調査のために, 高解像度タンデム質量分析と抗アセチルリジン抗体に基づくアセチル化されたペプチドの免疫親和性濃縮が組み合わせて用いられた。1589のリジンのアセチル化部位に含まれる901のアセチル化されたタンパク質がR. chinensisにおいて同定された。62のタンパク質はアップレギュレートされ, 18のタンパク質はダウンレギュレートされた。プロテオームタンパク質でのノーマライゼーション後, コントロールと比べて, 6のアセチル化リジンタンパク質はアップレギュレートされ, 43のアセチル化リジンタンパク質はダウンレギュレートされた。機能強化分析から, アップレギュレートしたタンパク質は, リボースリン酸化代謝行程, アミノ糖代謝, 酸化的リン酸化といった, KEGGパスウエイの調整に広く関与していた。特に, 複数の律速のある酵素を含む代謝酵素もまたアセチル化されていることがわかった。全体として, アセチル化部位に関する包括的な理解を進め, [P25] バガス食のCoptotermes formosanusの GC-MS Analysis of Metabolites Produced by Coptotermes formosanus Bred on BagasseWenjing Wuら3名(Guangdong Institute of Applied Biological Resources, China) バガスは砂糖産業における主な廃棄物で, 年間排出量も多い。しかしながらセルロースとヘミセルロースの含有量が高いので, 木化の程度が高く, その結果, 変換率と利用率が低くなってしまう。そのためバガスの総合的な利用は研究対象のひとつとなっている。シロアリはリグノセルロースから効果的にエネルギーを取り出す重要な分解者であるので, バガスも処理できるかもしれない。本研究では, GC-TOFMSを用いてシロアリのバガス食の代謝への効果を調べた。10日間バガス食で飼育したシロアリからサンプルを集め, 松の木を与えた場合と比較して解析した。代謝プロファイルのPCA解析では, 異なる餌で異なるクラスターに分かれた。バガス餌の場合には55の代謝産物の特徴的な発現が確認され, ソルビトールのような34代謝産物はアップレギュレートされ, マルトースのような21代謝産物はダウンレギュレートされた。KEGGデータベースから13のパスウエイが識別され, アミノ酸代謝と糖代謝の量が多いことがわかった。これらの結果から, バガスをシロアリのセルラーゼシステムを使って分解できる可能性が示唆された。[P26] Coptotermes formosanusのラッカーゼ阻害にDifferential Response of Cellulose and Hemicellulose Hydrolysis System to Laccase Inhibition of Coptotermes formosanusWenhui Zengら3名(Guangdong Institute of Applied Biological Resources, China) 下等シロアリにとって, 後腸共生生物による二重のリグノセルロース分解システムは重要である。ラッカーゼは, シロアリにとってリグニン分解に欠かせない内在性のオキシダーゼのひとつであるフェノールオ代謝産物のGC-MS分析対するセルロースおよび ヘミセルロース加水分解の異なる応答

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