1212地点を8か所から37か所に増設したことや, ライトトラップで捕捉した数千頭もの有翅虫を群飛終了時点の夜間に何十か所も即座にカウントできるようにするため, 以下の図の写真早見表を作成しました。この写真早見表は大群飛の最中, 汗だくで調査しているスタッフの現場作業をより効率化し, 作業時間の短縮につながった他, 調査も平準化することができました。作成にあたっては2万頭もの有翅虫を数えており, その発想と根気には感心します。この取り組みにより群飛結果を数字で管理できるようになり, 探査駆除地域を選定する上での重要なデータとなっています。 令和元年度からは母島の集落周辺の調査個所をさらに20か所増設し, より細かな範囲で群飛調査を行うことで, 営巣箇所の特定を目指しておりますが, 平成29年9月に蝙蝠谷で営巣を確認して以来, 令和2年11月時点で母島の集落周辺ではイエシロアリの営巣を見つけられていません。このため令和2年度からは風向, 風速, 湿度, 気温の情報も現場で計測し, このデータを数年間蓄積していくことで, 有翅虫がどの辺から飛んできたかを特定できないかと期待しているところであります。図2 イエシロアリ有翅虫群飛調査における捕捉数早見表写真6 イエシロアリによる建築用資材の被害7. 関係行政機関による横の連携が鍵 小笠原諸島での行政によるシロアリ駆除については平成6年9月28日に関東管区行政監察局長から改善通知が出されました。関係行政機関である環境省, 財務省, 林野庁, 東京都, 小笠原村が対策協議会を適宜開催し, 一体的・効率的なシロアリ対策を円滑に実施できるよう推進する必要があるとの通知を受け, 現在では年に4回, 国土交通省小笠原総合事務所が事務局となり関係行政機関によるシロアリ対策連絡調整会議が開催されています。しかしながらイエシロアリ対策地域が母島にも広がってしまい, 現在の小笠原村のシロアリ対策事業での駆除のみでは母島の対策についてはイエシロアリの有翅虫の確認範囲や頭数も拡大傾向にあり, 前線が後退している状態という大きな課題をかかえております。村民には「自分の財産は自分で守る」ことを基本方針として, 自らの家屋のシロアリ防除処理やシロアリ駆除については自己負担で対策していただいております(防除処理については, 一部小笠原村から奨励金制度があります。)。行政についても考え方は同じで, 各機関の所有地や管理地, 外来種駆除により木々を伐採した後の倒木や切り株については, それぞれが責任をもってシロアリの駆除をするようにお願いしておりますが, 全ての機関が駆除まで実施できておりません。このことにより, 山域にある公有地から有翅虫が飛び, 村民の財産である家屋や農産物, 希少植物が被害を受けている可能性も考えられます。各機関が駆除を継続的に実行することはシロアリ探知機の開発や更なる効率的な駆除方法の確立と共に, 大きな「鍵」となるため, 早期に実行していただけるよう, 引き続き粘り強く要望していく所存であります。
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