翻訳:京都大学生存圏研究所 藤本 いずみ14A Comparison of Morphology among Four Termite Species with Different Moisture RequirementsJohn Zukowski, Nan-Yao SuInsects 2020, 11, 262; doi:10.3390/insects11050262肛門の開口部, 気門からの蒸散によって失われる1,2)。体の水分ロスに関与する主要な界面であるクチクラには, 水分ロスを防ぐための微細構造(セメント層およびワックス層)が含まれている。体内の水分も呼吸中に気門から失われ, 呼吸に伴うガス交換の際にも失われる。気門が開いている通常の呼吸中, 水分は二酸化炭素とともに失われる。 糞の排出は水分が失われる別のルートであるが, レイビシロアリ科のシロアリは, 排泄物が直腸を通過するときに水を再吸収することが知られており, 乾材シロアリの被害の特徴的な兆候である硬く乾燥したペレット状の糞となる。シロアリはまた, 生活の場かつ食料としている木材から代謝的に水分を得ている。これは, 生息場所では直接水分を得ることが非常に困難なことから, 乾燥材を利用しているシロアリの特徴である。レイビシロアリ類のうちでも湿材シロアリもペレット状の糞を排泄するが, 生息環境の湿度により糞が柔らかくなり塊になる。地下棲息性シロアリは, 巣や蟻道の構築や修理に, 水分の多い排泄物を使用することがよくある。排泄物の違いは, 主にrectal padの生理機能の違いによるものであり, シロアリの直腸の違いが報告されている3)。 本研究に用いた4種シロアリは, 比較的異なる環境に生息している。Cryptotermes cavifrons Banks(“wetwood”シロアリ)は野外の比較的湿ったまたは乾燥した木材に生息しているのに対し, 同属であるニシインドカンザイシロアリCryptotermes brevis Walker(乾材シロアリ)はほとんどの場合, 建造物の乾燥木材で見つかっている。イエシロアリCoptotermes formosanus Shiraki(地下棲息性シロアリ)のコロニーは非常に湿度の高い地下のギャラリーやトンネルで見られるが, Neotermes jouteli(Banks)(湿材シロアリ)は, 湿って時には枯死した枝の湿度の高い環境に生息している。本研究に用いた4種はすべて, 南フロリダの一般的に湿度の高い環境から採集されたものであることから, それぞれの生息地で見られる本来の差異をForeign Literature要約 乾材シロアリのニシインドカンザイシロアリCryptotermes brevis Walker, “wetwood(高含水率材)”シロアリのCryptotermes cavifrons Banks, 地下棲息性シロアリのイエシロアリCoptotermes formosanus Shiraki, および湿材シロアリNeotermes jouteli(Banks)の生息環境の異なる4種シロアリについてクチクラとrectal pad(昆虫の直腸の一部の内壁に見られる襞状の構造)の厚さ, および気門の形態を比較した。クチクラの厚さは4種で有意に異なった。Neotermes jouteliはクチクラが最も厚く, イエシロアリは最も薄かった。ニシインドカンザイシロアリのクチクラはC. cavifrons及びイエシロアリより厚く, これはより乾燥した生息環境で水分ロスを防ぐ必要性が比較的大きいことを反映している可能性がある。rectal padの幅は, ニシインドカンザイシロアリとN. jouteliの間の差を除き, 4種で有意に異なった。N. jouteliとニシインドカンザイシロアリのrectal padはC. cavifronsとイエシロアリより厚く, C. cavifronsはイエシロアリより厚かった。より大きなrectal padは, レイビシロアリ類(N. jouteli, ニシインドカンザイシロアリ, C. cavifrons)の乾燥したペレット状の糞を生成する節水メカニズムを説明できるかもしれない。気門の形態学的観察により, 3種レイビシロアリ類に気門室の分岐(atrial arms)が認められた。この分岐の機能は明確でないが, ガス交換を助ける, または蒸散による水分ロスを防止する水分トラップとして嚢様の構造が機能している可能性がある。1. 緒言 小型で比較的柔らかい体であるため, 水分の消失はすべてのシロアリ種が直面する重要な問題である1)。コロニーを健康に保つために, 各自で水分を節約しなければならない。シロアリは通常, 閉ざされた蟻道や巣に生活し, 巣と採餌蟻道の相対湿度を好適に維持して深刻な乾燥を防ぐ。体の水分は, クチクラや口器と海外文献必要な水分量の異なる4種シロアリの形態比較
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