しろありNo.175
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小さくしているかもしれない。これらのシロアリのさまざまな生息地を考慮して, より乾燥した生息地に生息する種は, より厚いrectal padとクチクラを持ち, 気門の形態が異なる可能性が高いと仮定した。これを調べるために, 4種シロアリ間のクチクラとrectal padの厚さの違い, および気門の形態を比較した。門の形態を観察した。シロアリの体の硬い部分(頭部と胸部)の染色と切片作成時の不具合を避けるため, 薄く透明な外皮を利用するために, 腹部を使用した。 染色した腹部切片はLeica Application Suite(LAS) softwareで撮影し, GNU Image Manupulation Program (GIMP, The GIMP team, version 2.8.14, www.gimp.org, © 2020–2014)で測定値を解析する為保存した。クチクラの幅の測定は, 染色(クチクラがピンクまたは紫に着色された箇所)で厚さが測定可能な×200倍で行った。クチクラの平面にできるだけ直角に近いクチクラの幅を測定し, 状態の悪い切片を分析に使用しないよう注意した。rectal padの分析には, 腹部の横断面を通して観察されたものの幅を使用した。平面に可能な限り直角に近いrectal padの幅を測定し, 長円形またはその他の状態の悪い部分を分析に使用しないように注意を払った。rectal padとクチクラは, 6頭のシロアリについてそれぞれ複数の切片で測定した。気門の観察は, 複合機能型光学顕微鏡を使用し, 観察のみで, 形態に基づいて解析を行った。15152.2 切片作成, 染色, スライドの準備 職蟻もしくは偽職蟻(各種6頭)を解剖と切片作成用に準備した。クチクラ, rectal pad, 気門を観察した。頭部と脚を取り除き, 解剖学の検討試料とした。試料はブアン液(75%ピクリン酸, 20%ホルムアルデヒド, 5%酢酸)に入れ最短7日保持した5)。次に, 75%および95%エタノールで30分間3回, n-ブタノールで1回30分間, n-ブタノールで24時間3回脱水した。 脱水後, 試料を50%パラフィンワックスと50%n-ブタノール溶液に60°Cで6時間浸透させた後, 100%パラフィンワックスで60°Cで24時間3回浸透させてブタノールをパラフィンに置換した。次に, 試料を100%パラフィンワックスのブロックに包埋し, ミクロトームで切片を作成(〜7µm切片), スライドに貼り付け, 改良ハイデンハインのアザン法で染色した6,7)。染色したスライド(カバーグラスとパーマウント封入剤を含む)は, DFC450 Leicaカメラと組み合わせた複合顕微鏡(Leica DM500 B, Leica Microsystems製)を用いて各種倍率でクチクラとrectal padの厚さを測定した。解剖顕微鏡(Olympus SZX9, オリンパス製)にて, 気2. 材料と方法2.1 供試シロアリ ニシインドカンザイシロアリ, C. cavifrons, イエシロアリ, N. jouteliのコロニーはフロリダ州のBroward郡で採集した。ニシインドカンザイシロアリ, C. cavifrons, N. jouteliは生息材から採集した。イエシロアリはSu and Scherahn4)の論文に記載されているバケツトラップ法で採集した。いずれもポリスチレン製容器(17.15×12.22×6.03cm)に入れ, 26.4℃, 41.5% RHで飼育した。イエシロアリとN. jouteliは餌かつシェルターとして木材を入れ, 定期的に水を噴霧し湿度を95% RH以上に保った。2種Cryptotermesも餌かつシェルターとして木材を入れたが, C. cavifronsは定期的に水を補充した小皿を設置した。飼育状況は良好で, 適宜供試した。シロアリはインキュベーターにて飼育し, 6ケ月以内に供試した。2.3 Data Analysis 統計解析はJMP(JMP Pro, 2013. Ver. 11.0. SAS)で行った。4種間のクチクラ厚さ(ミクロン)とrectal padの幅(ミクロン)の差異はANOVAを用いた。Tukey’s HSD post hoc testを用いて有意差検定を行った。3.2 Rectal padの幅 ANOVA分析で, 4種間のrectal padの幅に有意差が認められた(df = 3, F = 48.4, p-value < 0.0001)。rectal padの幅はN. jouteliとニシインドカンザイシロアリ間では有意差が認められなかった(Table 2)が, 両種はC. cavifronsとイエシロアリより厚く, イエシロアリは最も薄かった(Table 2)。各種の6個体について複数3. 結果3.1 クチクラの厚さ ANOVA分析で, 4種間のクチクラの厚さに有意差が認められた(df = 3, F=55, p-value < 0.0001)。Tukey’s HSDでは4種間で有意差が認められ, N. jouteliは最も厚く, イエシロアリは最も薄かった(Table 1)。各種の6個体について複数個所で測定を行った。クチクラの厚さは, 柔軟性のある結合組織を除いて一般的には腹部では均一であった。Figure 1に染色したクチクラを示した。

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