しろありNo.175
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5)Wheeler, D.E. (1986): Developmental and physiological determinants of caste in social Hymenoptera: evolutionary implications. Am. Nat. 128 (1), 13-34.図5  雌雄の生殖虫と同居した際のワーカー体内におけるJH量の変化 (A)メスワーカーにおける実際の体内JH量の変化, (B)雌雄のアリにおいて普遍的な現象であり, 彼らの社会を支える重要な仕組みであると言うことができるだろう。生殖虫がワーカーの補充生殖虫分化を制御する仕組みの概要。ご支援・ご助力を賜りました東京大学理学系研究科の三浦徹教授, 下地博之博士(関西学院大学), 林良信博士(慶應義塾大学), 北條賢博士(関西学院大学)をはじめとする多くの方々に心より御礼申し上げます。また, 本稿の執筆の機会を与えてくださいました京都大学生存圏研究所の吉村剛先生に心より御礼申し上げます。なお, 本研究の遂行は日本学術振興会の特別研究員奨励費(no. 17J06879)を得て行われました。transitions in evolution. Oxford University Press.2 )Wilson, E. (1971): Insect Societies. Cambridge: Harvard University Press.3 )Khila, A., and Abouheif, E. (2010): Evaluating the role of reproductive constraints in ant social evolution. Philos. Trans. R. Soc. Lond., B, Biol. Sci. 365 (1540), 617-630.4 )Oster, G.F., and Wilson, E.O. (1978): Caste and ecology in the social insects. Princeton University Press.6 )Korb, J. (2015): “Juvenile hormone, a central regulator of termite caste polyphenism,” in 27277. さいごに 以上のように筆者らは, オオシロアリの繁殖分業が, 雌雄の生殖虫とワーカーの個体間相互作用や, その下流で動く生理変化に基づいてワーカーの脱皮や生殖腺発達が制御されることによって実現されることを明らかとしてきた。また, 筆者らは巣仲間同士のコミュニケーションがいかにして生理変化を引き起こすのか, そのカラクリを詳らかにしつつある。冒頭で述べたように, 繁殖分業は真社会性を象徴する性質である2)。では, シロアリがいかにしてこのような性質を進化させてきたのだろうか。時としてシロアリは, 社会性を持ったゴキブリと呼ばれ, 家族生活を営んでいたゴキブリのグループから進化してきたと言われている24)。そのため, 本稿で紹介したような個体間相互作用や生理変化といった仕組み, さらに明らかになりつつある個体間相互作用を生理変化へと繋ぐ機構が, シロアリの姉妹群である家族性のゴキブリ(キゴキブリ)にも存在するか, 比較解析を行うことがシロアリにおける繁殖分業の進化を促した仕組みの解明に繋がるかもしれない。謝辞 本稿で紹介した研究を行うにあたり, 実験計画の立案から実験そして論文執筆に至るまで, 様々な場面で引用文献1)Smith, J. M., and Szathmary, E. (1997): The major

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