しろありNo.175
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3030分は楽器用に製材される。楽器用部材としては高品質な無欠点部位のみが使われるため, 丸太から木取りまでの製材歩留まりは材積基準で約9%, 木取り材の平均取引価格は14,000~20,000USD/m3と報告されている7)8)。現在のミオンボ林全体で, ABWと同等の価値と需要を持つ樹種はなく, ABWはミオンボ林においてほぼ唯一の有用資源と言える。ミオンボ林におけるABWの個体数は決して多くなく, その中で楽器用部材として使われる部分はごく一部である1)9)。ABWは, 現地農村や林業従事者, そして楽器メーカーや演奏者, 聴衆にとって経済的・文化的に重要な資源であることから, 適切な森林管理によって持続的な資源保全を進める必要がある。図3 アフリカン・ブラックウッドの樹形(中央2本)表1 試験対象樹種名称と試験片情報10) ABWを中心とした適切な森林管理を進めるためには, その立地環境において共生する他樹種を効率的に利活用する必要がある。近年, 天然林におけるABWの成長は多様な土壌条件に適応している一方で, 林内の光環境が樹形に大きく影響を及ぼしている可能性が示唆されている1)。森林の光環境を制御するためには, ABWだけでなく他樹種の計画的な伐採・保育が必要であり, 伐採した樹木が森林の利益となるべく効果的に利用されていく必要がある。本稿では, ミオンボ林における多様な木材利用の促進を目的として, 木材の耐生物劣化抵抗性(耐蟻性, 耐朽性)の観点から, ABWおよびミオンボ林自生樹種の有用性を評価した研究の一部を紹介する。学名科名部位略語Dalbergia melanoxylonAfzelia quanzensisMillettia stuhlmanniiPterocarpus angolensisXeroderris stuhlmanniiCryptomeria japonica2. 耐生物劣化抵抗性10) 各樹種の耐生物劣化抵抗性は, シロアリに対する抵抗性(耐蟻性)と木材腐朽菌に対する抵抗性(耐朽性)から評価した。本稿では, 耐蟻性について主に述べることとし, 耐朽性については結果のみ記す。試験材料として, タンザニア南部のリンディ州キルワ県のミオンボ林内に自生する樹種のうち, ABWを含む5種を選出した(表1)。ABW以外の5樹種は一般的な流通量は少ないが, 現地での需要が少なからず存在していることから, 潜在的有用樹種(ABWと同様の有用性を有する可能性がある樹種)として選出した。本研究ではJIS規格(JIS K1571)に準じた評価手法を用いたため, 各試験ではスギ辺材(以下CJ-SW)(Cryptomeria japonica)をコントロールとして採用した。FabaceaeFabaceaeFabaceaeFabaceaeFabaceaeCupressaceaeHeartwoodSapwoodHeartwoodHeartwoodHeartwoodHeartwoodSapwoodABW-HWABW-SWAQ-HWMS-HWPA-HWXS-HWCJ-SW

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