しろありNo.175
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表面に紫外光を5分間照射し, 30℃, 暗所下で9日間静置したところ, 結晶薄膜表面は二つの異なるサイズの針状結晶に覆われた(図3b)。この時の結晶膜表面のSEM画像を, 1o, 2oそれぞれ単独の結晶膜に紫外光を照射後, 結晶成長させた微結晶膜表面と比較すると(図3)期待通りの表面が得られていることが分かる。図3  各誘導体(上段)の針状結晶で覆われた表面のSEM画像(中段)とその模式図(下段)(a)DAE 1cの針状結晶の成長した表面, (b)DAE 1cと2cの針状結晶の成長した表面, (c)DAE 2cの針状結晶の成長した表面 (スケールバー:5μm)サイズ分布を明らかにする目的で, Surf1c+2c表面に霧吹きで水滴を吹きかけ, 弾かれるのと吸着する水滴のサイズ分布を, Surf1c+2c, Surf1c, Surf2cの3つの各表面に対して測定した(図5)。落下する水滴を動画録画しながら観察し(図5a~d), コマごとに解析し, 跳ねる水滴や表面に止まった水滴のサイズ分布を求めた。これを見ると, 1cと2cのみでできている表面(Suf1cとSurf2c)では, 付着した水滴とバウンシングした水滴の分布の重なりが大きいが(図5e, f), 二つを混ぜた表面(Surf1c+2c)では2つの分布の重なりが小さくなるという現象が顕著に現れていた(図5g)。すなわち, 直径約200μmよりも小さな水滴はSurf1c+2cに効率的に付着し, それ以上の直径の水滴は跳ね返っていた。 ところで, 雨粒はサイズに依存してその呼び名が定義されている。気象庁の情報や文献によると, 雲や霧などの水滴は直径がおよそ100μm以下, 雨として分類される霧雨は直径100~500μm, 一般的な雨は直径500μm以上とされていた。そして, この分類を図5の分布に当てはめると, 偶然にもこの表面が霧のサイズの水滴を集め, 雨のサイズの水滴を弾いているということがわかった(図5g)。実際のテングシロアリも直径100μm程度の水滴は表面に付着し, それより大きい水滴は弾き返されることが報告されていた3,4)。すなわ334. 水滴を弾き, 霧粒を付着させる表面 この結晶表面が, 大きな水滴を弾き, 小さな霧粒を付着させるかを調べるために水滴落下実験を行った5)。これは, ある高さから超撥水性表面に対して水滴を落下させ, 水滴が表面と接触した後に跳ねるのかどうかで濡れ性を評価する方法である。そこで我々はSurf1c+2cに対して10cmの高さから7.6μLの水滴を落下させ, ハイスピードカメラ(1000フレーム/秒)で水滴の挙動を撮影した。すると, 小さな水滴が残り, ほとんどの水滴は表面で跳ね返った(図4a)。比較のために, 1cの結晶だけからなるSurf1cと, 2cの結晶だけからなるSurf2c表面に対しても同様に水滴を10cmの高さから落下させたところ, Surf1c表面上では水滴は跳ね返らずにくっついたが(図4b), Surf2c表面上では水滴は完全に跳ね返り(図4c), Surf1c+2c表面とは大きな差異を示した。  Surf1c+2c表面上で跳ね返る水滴と付着する水滴の

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