しろありNo.178
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図1  モルタル侵害実験用装置の構造 図2  装置の実験状況 路として上下し, その外側は往来ができないように薬品等を用いて遮断した。なおかつ1.5㎜の細孔の通路はイエシロアリの頭部の幅よりわずかに広い程度とし, 1頭のシロアリが歩行している間は, 反対方向から来たシロアリはその横を通過できないように設定された34)。同装置の概要図については図1を参照されたい。 同装置は全部で4個設置され, ガラス面を通してイエシロアリの行動を監視することとなった。具体的にはイエシロアリにとって「不便」な通路に対する行動や作業の有無や, 作業の方法やシロアリ内のどの種類が作業を担当するのか等について約1か月にわたって調査されることとなった。装置を用いた実験の様子については図2を参照されたい。 実験開始後, 2日経たないうちに, いずれの装置でも細孔を拡大するために側壁に向かって掘穿を試みる動きが見られ, さらに, 作業は人工的に作られた孔を拡張するだけでなく6日後には, ガラス面に密着するモルタル内に別の独立した坑道2か所の掘穿を開始したことが発見された。そして4台いずれの装置でも, 当初の1.5㎜の孔が3㎜以上に拡大されるとともに, 同出所) 栗山俊一「イヘシロアリの家屋侵害に就て」 『日本学術協会』, 1929年より転載したもの。通路から枝状に延びる道や, 別の道が多数作られるものも見られることとなった35)。 以上の結果を受けて, 台湾において広く普及しており, なおかつ防蟻力のあると思われたセメントでもシロアリが物理的破壊に及んだことが明確に確認された。 なおかつ, それまでセメント混合材がシロアリ被害を受けた際には, イエシロアリ内の兵アリがその頭部から分泌する酸性の液によって石灰質を溶かし, 一種の化学的作用で石灰混合材中に坑道を穿つとの説もあった36)。しかし栗山技師による実験によって, イエシロアリによる掘穿作業は, イエシロアリが木材に穿孔する場合と同様に歯を使用して破壊するとともに, 穿孔作業は全て職蟻によって行われ, 兵アリは穿孔には関係を有していないということが判明した。 以上の実験結果により, 栗山技師は, 実際の調査及び実験を行うことで, 従来判明していなかったイエシロアリの習性を明確にするとともに, セメント混合材がイエシロアリに対しては効力のないことを証明することになった。 したがって, それまで「唯一の防蟻法として考えら出所) 栗山俊一「イヘシロアリの家屋侵害に就て」 『日本学術協会』, 1929年より転載したもの。1111

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