孔を探索し, 建屋におけるカンザイシロアリのコロニー存在位置の確認を行った。有翅虫の侵入孔の目印となる木粉下部(写真2)は, アメリカカンザイシロアリの存在する部位(食孔, 糞の排出孔)につながっている場合があり, 重要な指標となる。また, カンザイシロアリの糞の堆積状況から, 糞が円錐状に体積する場合は, 糞の近郊に排出孔があり, まばらに散逸している場合は, 高所から落下して飛散するために, 少し離れた場所に排出孔があるケースが多い。 発見した木部の排出孔を中心に, 周辺をドリルで穿孔した後, 薬剤注入を行う。木部の穿孔は電動ドリルドライバーを用いるが, 排出孔は千枚通し, もしくは小型の電動ドライバーにドリルビッドを装着し(写真3)、穿孔した。穿孔する際に, ドリルの貫通力の変化を音や感触により確認しながら, 木材内部の坑道に当たったかを確認するが, 小型電動ドライバーは感触がつかみやすい。また, 手元を調整しやすく野地板や壁板などの薄い材や, 木材表面近辺を穿孔する場合は, 木部を貫通してしまうことを防ぎやすく便利である。写真2 侵入孔周辺構造(参考)写真3 小型電動ドライバー 小屋束, 母屋, 柱などの太径材は, 垂直方向や水平方向に角度を変え, 内部の坑道へ到達するイメージを持ちながら穿孔する。HimmiらがX線CTを用いて解析した木材内部におけるアメリカカンザイシロアリの巣の構造が参考になる2)。 穿孔時に使用したドリルビッドは2 mmから2.5 mmを用いた。径が大きすぎると, 板材や被害が表面に存在する場合は被害部を破損しやすく, また後述する薬剤注入時に薬液を圧入しにくい。室内や外構材は, 木栓に合わせて2.5 mm径のドリルビッドを用いて穿孔し, 薬剤注入後に木栓をした。柱材では斜め互いに千鳥状に穿孔を行った。 穿孔注入に使用する薬剤は, 関西・北陸しろあり対策協会の指定に基づき, 日本しろあり対策協会において“乾材シロアリ用駆除薬剤”第2号として登録されているハチクサン®FL及び, アメリカカンザイシロアリ防除で実績のあるガントナー®ムースエアゾールを用いた。 ハチクサン®FLは200倍希釈液とし, インジェクター(SUREKILL LIQUID PRO KIT SPRAYER)を用いて, 注入処理を行った。またガントナー®ムースエアゾールは環境機器社のピペットノズル(写真4)を用いて施工した。ムースエアゾールは, ノズルから噴射後に自然に発泡しムース状の泡となる。発泡の圧力により木材内で泡が押出され, 連続する坑道および食孔内に泡が充満し薬液に触れたカンザイシロアリを駆除する。また, 泡はムース状で水分量が多く, 木材内部で水分が拡散する。この水分移動と共に, 溶液中に溶解した有効成分が拡散し, 薬液が染み込んだ木部への接触や, 食害したアメリカカンザイシロアリも駆除することが可能で, 残効効果が期待できる。写真4 ピペットノズル1717
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