2222為, 地域全体での同時防除が必要であり, 住民個人単位では対応は困難であり, 行政による対応が望ましい。しかしながら, 様々な制約もあり現実的には難しく, 進んでいない状況である。 少しでも被害を抑え, また周辺への拡散を抑制するためには, 早期発見と防除が重要となる。しかし, 総合管理システムに基づく駆除剤での施工は, 外周を含め建物全体を防除対象とする必要があり, ヤマトシロアリやイエシロアリに対する施工と比較しその範囲は広い。また, 生息箇所それぞれに防除処理が必要であり, 時間もかかる。継続的な点検・再施工も必要となり, 防除費用は高額になる。 アメリカカンザイシロアリの被害はイエシロアリ等に比べると, 加害速度は緩やかではあるが, 確実に広がり, 周囲へも拡散していく。完全ではないかもしれないが, 費用面を考慮しシステムの部分的な運用による, 主要被害部の駆除や有翅虫の拡散防止のための木部処理を実施することで被害の進行を抑制する対策も必要ではないかと考える。 総合管理システムは平成20年に制定され, 14年が経過したが, 総合管理システムについても, 一度検証を行うことも必要かと考える。現在の登録薬剤は, 擬職蟻を用いた継続接触による殺虫性能を指標に評価されている。しかし, 予防処理の観点では, 擬職蟻と群飛した有翅虫では行動の違いにより, 薬剤への曝露時の反応も変わる可能性がある。当社でも, 薬剤種によっては, 有翅虫に対しては十分な効果が期待できないケースも確認している。しかし, 有翅虫を対象とした試験は, 供試虫の確保の点から難しい面もある。代替手法として, 擬職蟻の短時間暴露試験などにより, 有翅虫に対する効果を類推する手法なども検討の余地があると考える。また, アメリカカンザイシロアリ施工に便利なムース剤などは土壌処理剤, 予防駆除剤ほどの薬剤市場はない状況もあり, 登録認定要件である安全性試験費用などの開発費負担が大きくなってしまう可能性もある。市場実態に応じた, 認定要件についての検討も期待したい。を積算し, 見積を出すという形であった。責任施工と異なり, 実作業者が被害状況や作業量から, 作業量を見積もる形ではないため, 現場の被害状況に応じて施工範囲が変るアメリカカンザイシロアリ防除施工においては, 想定工数をもとにした見積と, 実作業量に乖離が生じる恐れがある。一定の調査料を設定し, 委託予定の会員企業による施工見積のための詳細な調査を実施し, より正確な作業量を元に見積作成する手順を定める必要を感じた。また, 定期点検についても, 点検時に再発や新たな被害発生個所が少ない場合は, 防除を同時に行うほうが効率的であり, 点検費用の見積に際しては, この点を考慮しておく必要があろう。イ)関西・北陸しろあり対策協会による請負について 関西・北陸しろあり対策協会が行政から防除施工を請負, 会員企業へ委託する形で施工を実施した。見積は, 関西・北陸しろあり対策協会がこれまでの被害調査結果を元に, 物件の被害度(大・中・小)と, 延べ施工面積から作業人数を決定し, 人工あたりの基本単価4. おわりに 今回の防除を実施したB町では, アメリカカンザイシロアリの被害軽減や被害拡大の抑制を目的に, 自治体, 住民一体となって住民自らが可能な範囲で防除を実施することも検討されている。しかし, アメリカカンザイシロアリの被害は小屋裏を中心に発生しており, 不慣れな方は作業を行うと落下事故なども懸念される。また, アメリカカンザイシロアリ駆除の目印となる糞や有翅虫の状態を変えてしまうことで, 業者による防除作業を実施する必要が生じた際にはかえって被害個所の確認を妨げるなどの恐れもある。 アメリカカンザイシロアリの根絶は, 燻蒸処理を総合的に実施できるかどうかである。燻蒸処理は, 都市部では住宅間の距離が近く難しい場合もあるが, 燻蒸処理の実施可否は金銭的な問題であるところが大きい。言い換えればお金で解決できる問題でもあるが, 最も難しい問題でもある。15年前から行政による補助金での対応も検討されているが, 現在もほぼ進んでいない状況である3)。 アメリカカンザイシロアリの被害進行は遅く, 短期的には被害が小さい。このため, 加害木材や建築物への影響も軽視されがちであるが, 対策を講じない限り, 食害は確実に進行し, 家屋, 地域間の拡散も続く。以前より, 京都大学の吉村教授4)は, 住民個々による対応ではアメリカカンザイシロアリの根絶は不可能であり, 行政, 研究者, 業界団体, 薬剤メーカーなどが一体となり, 本課題に取り組むことの必要性を指摘していた。今回の関西・北陸しろあり対策協会とB町の事業を契機とし, アメリカカンザイシロアリ対策を国レベルで行政が課題として取り組むように, 日本しろあり対策協会, 研究者, 連携団体, 業界関係者が連携し, ア
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