25252.4 水素産生細菌の同定 「2.3 分離細菌により産生される水素とメタンの測定」において水素を産生したコロニーに相当するマスタープレート上のシングルコロニーをクリスタルチップ(epT.I.P.S. Standard 0.5-20 µL, Eppendorf)を用いてピックアップし, クリスタルチップの先端を0.2mL PCRチューブ内のPCR溶液(KOD Dash, Toyoboのプロトコルに従い調製)50 µLに浸漬した。PCRで水素産生細菌の16S rRNA遺伝子のV3-V4領域DNAを増幅した13,15,18)。PCR条件は, 94℃30秒, 55℃30秒, 74℃30秒を35サイクル行った。PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で分離し, GelRed Nucleic Acid Gel Stain(BTI Biotium)で染色し, 465 bp(V3-V4領域)付近に現れたDNAバンドを切り出し, NucleoSpin Gel and PCR Clean-up(Macherey-Nagel)で精製した。pGEM®-T Easy Vector System(Promega)を用いて, 精製したPCR増副産物とプラスミドとのライゲーション反応を行った。反応後のプラスミドをECOSTM Competent E. coli JM109(ニッポンジーン)に導入した。LB寒天培地上に生じたシングルコロニーをクリスタルチップでピックアップし, GoTaq® Green Master Mix(Promega)およびT7 promoter, SP6 promoterプライマー対を用いて, コロニーダイレクトPCRを実施した。PCR条件は, 95℃30秒, 55℃60秒, 72℃60秒を30サイクル行った。PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で分離し, GelRed Nucleic Acid Gel Stain(BTI Biotium)で染色した際に643 bp(V3-V4領域465 bp + pGEM-T Easy VectorのT7 promoterからSP6 promoter間の178 bp)付近にバンドが現れたコロニーを選択した。この様にして選択したコロニーを, LB液体培地で19時間, 37℃で振とう培養した。増殖した大腸菌を遠心分離で集菌し, NucleoSpin® Plasmid Easy Pure(タカラバイオ)を用いてプラスミドDNAを精製した。精製したDNAの塩基配列解析をMacrogen Japan(https://www.macrogen-japan.co.jp/cap_seq_0101.php)へ委託した。得られた塩基配列の相同性をBLASTn(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)で検索した。また, これらの塩基配列をMAFFT(https://mafft.cbrc.jp/alignment/server/index.html)を用いてアライメント解析し, 保存領域の464 bpを対象にNJ法(Neighbor joining method, 近隣結合法)で系統樹を作成した。3. 結果と考察 鹿児島県, 宮崎県, 和歌山県で採集したヤマトシロアリ職蟻の腸から分離した水素産生細菌それぞれ10株から産生された水素量を図1, 2に示した。採集地ごとの嫌気培養時の水素産生量(図1)は, 好気培養時の水素産生量(図2)の約40, 25, 80倍(順に鹿児島県, 宮崎県, 和歌山県)であった。また, 鹿児島県で採集したヤマトシロアリ職蟻の腸から分離した株では, 嫌気培養時に水素産生量が著しく多い外れ値(特異点)が2つあり, それぞれ155.3 ppmと48.6 ppmであった。鹿児島県, 宮崎県, 和歌山県の水素産生量には, 嫌気的雰囲気下ならびに好気的雰囲気下ともに有意差は認められなかった(p > 0.05)。一方, 嫌気的雰囲気下および好気的雰囲気下ともに, メタンは検出されなかった。 鹿児島県, 宮崎県, 和歌山県で採集したヤマトシロアリ職蟻の腸から分離した水素産生細菌それぞれ10株の16S rRNA配列をTAクローニングした結果, 鹿児島県で7株, 宮崎県で2株, 和歌山県で2株の塩基配列を解析することができた。これらの塩基配列をBLASTnで検索した結果, 和歌山県の2株はいずれもEnterobacter hormaechei(WE 12T株;相同性99.35%, 462/465, score 848, e-value 0.0, WE 13S株;相同性99.57%, 463/465, score 848, e-value 0.0)が最も相同性が高かった, 他にもEnterobacter mori(WE 12T株;相同性99.36%, 463/466, gap 1/466, score 843, e-value 0.0, WE 13S株;相同性99.35%, 462/465, score 843, e-value 0.0), Enterobacter bugandensis(WE 12T株;相同性99.14%, 461/465, score 837, e-value 0.0, WE 13S株;相同性99.35%, 462/465, score 843, e-value 0.0), Enterobacter cloacae complex sp.(WE 12T株;相同性99.14%, 461/465, score 837, e-value 0.0, WE 13S株;相同性99.35%, 462/465, score 843, e-value 0.0), Enterobacter asburiae(WE 12T株;相同性99.14%, 461/465, score 837, e-value 0.0, WE 13S株;相同性99.35%, 462/465, score 843, e-value 0.0), Enterobacter roggenkampii(WE 12T株;相同性99.14%, 461/465, score 837, e-value 0.0, WE 13S株;相同性99.35%, 462/465, score 843, e-value 0.0), Enterobacter chuandaensis(WE 12T株;相同性99.14%, 461/465, score 837, e-value 0.0, WE 13S株;相同性99.35%, 462/465, score 843, e-value 0.0)の相同性も高かった。これらの相同性値は, 塩基配列での菌種識別の類似性閾値(99.0%)を超えていたため19), 16S rRNA塩基配列の解析では, 和歌山県の水素産生細菌が
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