しろありNo.178
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Reports シロアリは木質バイオマスを常食としており, その分解能力の高さから木造建築物を食害する害虫としても知られている。シロアリの分解能力が高い理由として咀嚼器で物理的に粉砕することで, 結晶構造を崩し, その結果, 酵素の接触可能な面積が増大されることがある5)。これらのことから, シロアリは他の木質バイオマスを利用する生物と比較しても, 間伐材を分解する速度は極めて高いと考えられ, 木質バイオマスを利用する為に用いる生物としては最適だと言える。 シロアリは高脂質で高タンパク質であることが知られていることから6), 家畜や養殖魚の飼料, バイオ燃料として有用であると考えられる。また, 間伐材を利用してシロアリを養殖するのにかかるコストは理論上低いと考えられることから, 間伐材を用いてシロアリを繁殖させることができれば, 市場的価値は非常に高く, 間伐材に新たな価値を見出し有効活用することができる。 上記のようにシロアリを活用していく際は, 間伐材に最低限度の処理を施すだけでも生育できるシロアリを用い, かつそれらの個体群を効率的, 工業的に増殖させることが重要である。我々はこれらの要件を満たすグループとしてオオシロアリ科に注目し, 間伐材で予備的な飼育を行った。その結果, ネバダオオシロアリはヒノキ間伐材での生育は可能であるが, 飼育するケースによって増殖速度は一定では無く, 特に飼育開始時の個体数によって産卵数が大きく異なっていた。 そこで本研究では, ネバダオオシロアリの個体群密度と産卵数の関係を調査することで, 個体群密度が個体群の増殖に及ぼす影響についての検討を行った。さらに, ネバダオオシロアリに含まれる脂質の量や成分を分析することで, 活用方法の模索も行った。1清風高等学校 横川智之 髙橋英眞1. はじめに間伐材の現状と課題 日本は国土の約7割を森林に覆われ, 世界の中でも森林占有率の高い国の一つである。主にスギ, ヒノキなどの人工林が戦後の復興需要や経済発展に向けて多く植えられ1), 現在, 人工林は日本の森林面積の約4割を占めている。森林は国土保全や水源の涵養などの多面的機能を持っているが, その多面的機能を発揮するためには間伐など適切な森林整備が必要である2)。しかし間伐材は収集, 運搬に多大な能力と経費がかかり採算性がとりにくいことや利用方法が少ないことが理由で, 多くの森林中に間伐材が放置されている3)。このことは人工林の荒廃を引き起こす大きな課題となっており, 実際, 荒廃した人工林の多くが土砂崩れなどの災害を引き起こす原因となっているなど, その影響は深刻である。これらの課題を解決するため, 間伐材利用の動きが進んでいる。その中の一つに間伐材を用いたバイオエタノールの生成がある。しかしながら木質資源の糖化の難しさが問題としてある。木材の細胞壁の主成分はセルロース, ヘミセルロース, リグニンである。セルロースの周りがヘミセルロースやリグニンで覆われていることや, セルロース自体に結晶性があるほか, 水素結合も非常に多いことから, 分解が難しいことが理由として挙げられる4)。セルロースの分解には硫酸等の酸を使用する方法と酵素による反応がある。しかし酸分解法には廃酸の処理等の問題がある。そのため世界では酵素糖化法の研究が多く行われているが, 前述したとおり, セルロースがリグニンやヘミセルロースに覆われ, ほとんど反応しないうえに, セルロース自体も上記の通りなので, 酵素反応を受けやすくするためには何らかの前処理が必要である。また, 酵素の価格が現段階では高い水準にあることも問題としてある4)。現在, これらのことについて研究が進められているが, 処理にかかる費用の方が高くなる可能性も十分に考えられる。そこで現段階から別の間伐材利用方法についても模索していくべきである。報文オオシロアリを用いた新たな間伐材の活用法

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