しろありNo.178
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22ていくことを示唆しており, この場合低密度条件下での生存数の減少は比較的穏やかであると予想される。しかし, 後者が影響している場合, 低密度条件下では生存数が大幅に減少すると予想され, シロアリを養殖する際には, 初期の時点である程度の個体数を必要とすることを示唆することとなる。このような可能性を論述する上で, 生存数は重要な指標であるといえる。産卵数 多くの群生生物において, 低密度条件下と高密度条件下でベクトルは異なるものの, 個体群密度と産卵数には一次関数的な相関関係が確認されている。このことから, 既に述べたように世代間での区別が付き辛いシロアリにおいて, 産卵数は第二世代に働く密度効果を測定する最適な指標であるといえる。生存数 低密度条件下において産卵数が少なくなる場合, 低密度故に接触が起きにくいこと, 外的要因により個体数が激減したことなどが原因として挙げられる。前者のみが影響している場合, 長期的には個体数が増加し2. 試験内容(1) 個体群密度が増殖に及ぼす影響コロニーの構成 雌雄, ワーカー, ニンフの構成割合については無作為に抽出した。ソルジャーは繁殖兵隊などの一部例外はあるものの7), 一般的に繁殖には関わらないことや, 生育のために他のワーカーなどからの餌の給餌を必要とすることなどから, ソルジャーの構成割合が試験区ごとに異なることは大きなノイズになると判断し, 割合は採取したコロニーのソルジャーの割合と同様に2%とし, 小数点以下は切り上げた。 指標 ネバダオオシロアリの密度効果を調べる際の指標として, 産卵数と生存数を用いた。一般的に密度効果を調査する指標として, 二世代目以降の孵化率や成虫数などが用いられるが, シロアリは不完全変態であることや, シロアリが年中産卵することから世代間の区別が付き辛いため, 計測は行わなかった。また, 成虫数については前述した通り, シロアリは不完全変態であるのだが, シロアリは一般的に分化することが知られているため, 形態の区別が付きやすいソルジャーや羽アリなどの発生数から第二世代に働く密度効果について検証することも考えた。しかし, ソルジャーについてはフェロモンの濃度などで分化個体が制御されていることが既に知られていることから8), 密度との関係のみを測る上では適切ではないと考えた。また, 羽アリについては, 本試験を行ってから既に二年以上経つものの羽アリが全く発生しなかったため, 指標として用いることが出来なかった。試験方法 アクリルの飼育容器(幅16cm×奥行き22cm×高さ4cm)に直径13cm×高さ3cmにそろえたヒノキ間伐材を一枚投入し, そこに20頭, 40頭, 60頭, 80頭, 100頭, 120頭, 140頭のネバダオオシロアリを投入した。飼育容器は23±2.0℃に保たれた飼育室の中央付近に並べ, 飼育室はネバダオオシロアリにストレスがかからぬようなるべく暗くした。各個体数で行った試験を1反復とし, 3反復行った。ネバダオオシロアリ投入40日後, 各個体数の飼育ケースで産卵数と生存数を計測した。なお, 餌には十分な加水処理を行い, 砂とバーミキュライトを4:1に配合したものを容器の下に敷いて水を加え, 水分量を一定に保った。(2) ネバダオオシロアリに含まれる脂質の量と成分試験方法 ネバダオオシロアリに含まれる脂質は, ソックスレー抽出器を用いてジエチルエーテルで抽出し, 溶媒を除去した後に残った残留物の質量を測定した。脂肪酸組成はジエチルエーテル抽出物から溶媒を除去した後にメチルエステル化した脂質を, ULBONHR-SS-10カラム(信和化工(株))を使用したガスクロマトグラフィー(GC-14A, 島津製作所)により分析した。なお, 30頭のネバダオオシロアリ(体長13㎜内外のワーカー)を1試料として分析を行った。試行数は3とし, 脂質成分を分析する際の1試料に対する, 繰返し数は2とした。脂質量の測定及び脂肪酸組成は板倉ら(2006)と同様の方法で行った。統計処理 統計計算は主としてエクセル統計2016(ver. 3.20)を用いた。また, 個体群密度が増殖に及ぼす影響の検定においてはSpearmanの順位相関係数を用いた。

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