しろありNo.178
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率存生0頭10.90.80.70.60.50.40.30.20.10Figure1. 個体群密度と生存率の関係ネバダオオシロアリは糞や唾液に抗菌活性のある物質が含まれていることが報告されており9), 間伐材に潜在する菌の増殖を抑えることが出来ていると考えられる。このことから本試験での飼育方法は概ね問題ないと言える。また, 140頭の試験区においても生存率に著しい変化がないことから, 今回の条件で餌の枯渇なども生じていないことが示唆される。また, シロアリは社会性昆虫であるため, 高密度下でも共食いなどが抑制されていることも, 生存率が後述する産卵数より変化しない原因であると言える。 次に, 個体群密度と産卵数とでは低密度下において非常に強い正の相関関係が見られた。本試験では, 未処理の間伐材にシロアリを投入しているので, 巣を作成するのにかかるコストが大きく, 産卵率が低下したのではないかと考えられる。また, シロアリは生殖能力を持たない個体も一定数存在する。本試験で最も低密度な20頭では, どの区でも産卵が確認されなかったことから, 密度が極端に小さいグループでは生殖能力を持つ個体が存在しなかったと考えられる。 一方, 高密度下では上記に挙げた課題は克服されている。それにも関わらず, 個体群密度と産卵数において高密度下では非常に強い負の相関関係が見られた。実際, 自然界において, シロアリの個体群密度が一定に保たれていることが報告されている10)。本試験の結果はそれらと同様であるといえる。このことから, シロアリは何らかの機構により産卵数を減少させることによって, コロニー内の個体群密度を一定に保ってい6080204010012014033(2)ネバダオオシロアリに含まれる脂質の量と成分 各試料からそれぞれ37mg, 60mg, 91mg抽出され, ネバダオオシロアリに含まれる脂質量は13%~30%であった。各試料のGC分析の結果をFigure3に示した。脂肪酸及び組成比は①オレイン酸49%, ②リノール酸22%, ③パルミチン酸22%, ④ステアリン酸5%であった。3. 結果(1)個体群密度が増殖に及ぼす影響 40日後の個体群密度と生存率には弱い相関関係が見られた。(Figure1, Spearmanの順位相関係数r=-0.505, p<0.05) 40日後の個体群密度と産卵数では, 20頭~100頭では強い正の相関関係が見られ(Figure2, Spearmanの順位相関係数, r=0.730), すべての区において有意な差が認められた(Figure2, p<0.001)。他方, 100頭~140頭では, 強い負の相関関係が見られ(Figure2, Spearmanの順位相関係数, r=-0.754), すべての区において有意な差が認められた(Figure2, p<0.05)。4. 考察(1) 個体群密度が増殖に及ぼす影響 生存率はどの個体群密度においても8割程度であり, 個体群密度と生存率との相関は弱かった。 低密度においても生存率に変化がないことから, カビなどによる外的な要因が影響している可能性は棄却される。

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