しろありNo180
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Termite Journal 2023.7 No.180g-termite, 未解剖のイエシロアリ兵蟻でCu 11.4 100 g-termite, Ni 0.09 mg/100 g-termite, 腸を除去しg-termite, Ni 0.13 mg/100 g-termite, 大顎でCu 30.5 g-termite)は, 表3に示した兵庫県, 鹿児島県, 和歌山県で採集したイエシロアリ兵蟻に含まれるCu含有量(6.7, 2.9, 4.0 mg/100 g-termite)の2~4倍に相当する。一方, 上述した吉村らによる報告13)では, Niは未解剖のイエシロアリ職蟻と兵蟻からは検出されていない13.3 mg/100 g-termiteに相当するNiが検出されてい66でCu 4.7 mg/100 g-termite, 腸でCu 1.1 mg/100 mg/100 g-termite, 解剖した兵蟻の頭でCu 0.5 mg/ た体でCu 10.4 mg/100 g-termite, 腸でCu 5.3 mg/100 mg/100 g-termite, Ni 13.3 mg/100 g-termiteとなる。未解剖のイエシロアリ職蟻のCu含有量(Cu 4.4 mg/100 g-termite)は, 表3に示した兵庫県と鹿児島県で採集したイエシロアリ職蟻のCu含有量(6.6, 5.5 mg/100g-termite)とほぼ同じ値であるが, 和歌山県で採集したイエシロアリ職蟻のCu含有量(Cu 16.3 mg/100 g-termite)の約1/4であった。また, 未解剖のイエシロアリ兵蟻のCu含有量(11.4 mg/100 が, 職蟻の頭で0.14 mg/100 g-termite, 兵蟻の頭で0.09 mg/100 g-termite, 腸で0.13 mg/100 g-termite, 大顎で る。この大顎のNi含有量は, 表3に示したイエシロアリ職蟻と兵蟻のNi含有量よりも多い。大顎の先端部にMnなど特定のミネラルが集積する例が, コウシュンシロアリ, ダイコクシロアリ, アメリカカンザイシロアリ, ネバダオオシロアリ, イエシロアリ, ヤマトシロアリ, タイワンシロアリ, タカサゴシロアリなど多くのシロアリで報告されており12), ミネラルを大顎の先端に集積させることで大顎を強靭化していると考えられている18, 19)。これまでにAl, Ca, Cl, Cu, Fe, Mn, K, P, S, Si, Znの大顎にける分布が調べられたが, 大顎先端部へのCuの集積は報告されていない12)。酵素が活性化するために金属イオンを必要とする場合があり, ラッカーゼなど活性発現にCuを必要とする酵素の構成要素としてCuがシロアリ体内に存在しているものと推定される。シロアリのゲノム解析により, ラッカーゼ遺伝子がイエシロアリ20)とヤマトシロアリ21)でそれぞれ見出されている。ラッカーゼは、昆虫の脱皮に伴う外骨格の硬化・着色の過程でジフェノール類を酸化する機能があり, さらに昆虫の腸管における生体防御という機能を有する酵素としても知られている22)。一方, Niはウレアーゼの構成成分であることが報告されている23)。ウレアーゼは尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する酵素であり, イエシロアリの共生原生生物Pseudotrichonympha grassiiの細胞内に共生する細菌CfPt1-2がウレアーゼ遺伝子を有することが報告されている24)。ラッカーゼやウレアーゼ以外にも金属イオンを含む酵素は多く, CuやNi以外にもCa, Co, Cr, Fe, Mg, Mn, Mo, Zn, Vなどの金属イオンが多くの酵素の活性発現に必要であることが報告されている23, 25)。アカマツのCu含有量は3µg/g, Ni含有量は0.7 µg/g 13), またタイワンシロアリの巣周辺の土壌のCu濃度は0.974 mM(シロアリ腸内の5~40倍), Niの濃度は1.56 mM(シロアリ腸内の40~200倍)14)と報告されている。本研究でシロアリを採集した周辺の土壌やシロアリが摂食している木材に含まれるミネラルを測定しないので推測の域を出ないが, 生物濃縮によって木材に含まれる微量ミネラルがシロアリ体内に集積した結果13), あるいはシロアリが地中に蟻道を掘り進める際に土壌中の微量ミネラルを吸収した結果, コロニーによってはアカマツに含まれるCuの約50倍(和歌山県で採集したイエシロアリ職蟻;表3, 鹿児島県で採集したヤマトシロアリ兵蟻;表4)に相当するCu, あるいはアカマツに含まれるNiの約10~15倍(和歌山県で採集したイエシロアリ職蟻と兵庫県で採集したイエシロアリ兵蟻;表3, 宮崎県で採集したヤマトシロアリ職蟻, 鹿児島県と和歌山県で採集したヤマトシロアリ兵蟻;表4)に相当するNiがシロアリから検出されたものと推定される。5.まとめ イエシロアリとヤマトシロアリに含有されるミネラル量にはコロニー間でばらつきがみられた。100 gのイエシロアリあるいはヤマトシロアリを食べた場合, コロニーによっては1日当たりの耐容上限量を超えるCuが含まれる場合があることが明らかとなった。また, 100 gのヤマトシロアリを食べた場合, コロニーによっては1日当たりの耐容上限量を超えるNiが含まれる場合があった。一方, Cuを除く必須ミネラル15元素の中には, 1日当たりの耐容上限量を超える元素はなかった。1日当たりの耐容上限量の50~60倍のMnが含有される場合のあるMacrotermes属やOdontotermes属のシロアリとは異なり, イエシロアリとヤマトシロアリに含有されるMn量は, 1日当たりの耐容上限量を超えることはなかった。

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