しろありNo180
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図3  全個体(n = 228, 24変数)の主成分分析バイプロットグラフ シロアリ種によって表示の色を変えて示した。同じ軸方向に向かう相関のある変数は, 共線性を示す。グループI の変数は横軸に沿ったデータ分布に, グループ ii の変数は縦軸に沿ったデータ分布に影響を与える。なおローディング値が0.5を超える変数や特性を有意とみなした。Termite Journal 2023.7 No.180 1111 線形形態データおよび幾何学的形態データの主成分分析(PCA)および判別機能分析(DFA)は, 各々統計パッケージIBM SPSS Statistics 27(IBM Corp., 米国)とMorphoJ プログラム(version 1.07)を用いて実施した22)。3. 結果 主成分分析(PCA)の結果, グループ分け(1つのグループに1種)を支持的な特徴を持つ2つの成分(ローディング値>0.5)が見つかった。成分1には頭部, 胴体, 付属器の特徴が, 成分2には体毛数の特徴が含まれており, 両成分で累積分散の82.43%をカバーした(図3)。 判別機能分析(DFA)では, グループ化した事例の未分類として処理された。頭部幅, 前胸背板の体毛数, 下唇後基節の平均長が重要な識別変数という結果となった(ローディング値>0.5)。 兵蟻頭部のシェイプ解析では, 52の主成分(PC)が抽出され, PC1, PC2合わせてサンプル内の累積分散のは, 前頭部の狭さ(標識点1~9, 52~54)と後頭部の側方拡大(標識点11~50)を説明し, 全シロアリ種において緩やかな側方拡大が見られた。PC2は, 頭部中央(標識点8~18, 43~54)の側方拡大と, 最後端部(標識点22~38)の収縮を表現した。後頭部の側方拡大とともに前胸背板や頭部の体毛数が増加するなど, 線形形態学的特徴と幾何学的形態学的特徴の一貫したパターンが観察された(図4)。4. 考察4.1  イエシロアリ属兵蟻の防衛機能の違いを反映したサイズとシェイプのバリエーションについて C. gestroiの兵蟻は職蟻から分化し, 実験室コロニーでは若齢職蟻から, 自然コロニーでは老齢職蟻から分化する23)。兵蟻の発達は, 大顎と頭部の大きさ, 特に大顎と頭部長の発達に大きく影響する24, 25)。シロアリの頭部は大顎筋と額腺で満たされており, 兵蟻の大顎の発達に応じて頭部サイズが拡大すると考えられる26)。本研究では, イエシロアリ属の各グループにおいて, 頭部の幅と長さの等尺性を解析した。一般に, 頭部は長いほどその幅が広くなる。頭部の長さと幅とが高い相関を示したことから, コロニー内の特定の労働をサポートするために適応した機能的な形態を示さないかもしれない。しかし, 幾何学的形態解析の結果, イエシロアリ属シロアリ全種において, 頭部後方における側2.4 統計解析3.1 線形形態計測99.5%が正しく分類された(交差確認)。本分析によりC. gestroiがC. sepangensisに誤って分類される確率は1.2%であった。C. kalshoveniは標本数が少ないため, 3.2 幾何学的形態計測解析74.79%を占めた(PC1=57.24%, PC2=17.55%)。PC1

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