Termite Journal 2023.7 No.180 図4 幾何学的形態計測の標識点の主成分分析 ドットはシロアリ種によって色を変えて表示した。グラフ中にはイエシロアリ属シロアリ兵蟻における4つの特徴的な頭部形状を示した。棒グラフは頭部, 前胸背板各部位における体毛数を示す。方への拡張が明らかになった。ダイコクシロアリ属は, 頭部前方で巣の開口部を密閉し捕食者の侵入を防止する27)。この行動は, ヤマトシロアリでも観察されている28)。しかしイエシロアリ属では, 頭部を捕食者の侵入防止に使う防御戦略は観察されなかった29)。このようなアロメトリックな頭部の幅と長さの特徴は, ミゾガシラシロアリ科シロアリの特徴的な防御方法である噛みつきと額腺から防御物質を絞り出すための大顎と大顎顎筋の発達と関係があるのかもしれない30)。また, C. kalshoveniやC. sepangensisなどの小型種とC. であることも確認された。これは, イエシロアリ属の防御器官としての頭部の多様な発達レベルを示しているのかもしれない。都市に生息する害虫種の中には, C. り, 攻撃的な防御スタイル(突進や攻撃)をとることが知られている28, 29, 31)。しかし頭部がより外側に広がっている種は, これらとは異なる防衛行動をとる。また, サイズに関係なく, 頭部が拡大するほど, 体毛数が多い傾向が観察された。curvignathusを識別するためには, 頭部の特徴が重要gestroiやイエシロアリのように頭部の幅が狭い種があ12124.2 重要な形態学的特徴としての体毛 一般に, 体毛はミゾガシラシロアリ科シロアリの重要な識別特性であり, 特にヤマトシロアリ属, Heterotermes属において重要である8, 12, 32)。今回の解析では, 前胸部, 頭部, 後胸部の体毛により5種の識別が可能であった。また, 体毛は他のサイズに関連する特徴とは非相関であり, 世界的に分布する害虫種であるC. gestroiのような特定の種に特徴的な識別点である33-35)。C. curvignathus, C. elisae, C. sepangensis, C. kalshoveniは, C. gestroiに比べて体毛数が多く, 分布域が限定されていることが知られている。これらの分布域は主に都市近郊や発達した二次林である。 体毛は内腔または体毛基部に神経系を有する場合, 感覚受容器として機能する36-41)。イエシロアリ属シロアリ兵蟻の頭部が側方に拡大するにつれて体毛数が増加することも, 感覚受容器と形態的変化との関係性を説明しうる傾向である。感覚系は化学物質による個体間コミュニケーションを支えるだけでなく, 競争相手や捕食者の検出, 空気の流れ, 空気中を伝わる振動など外部刺激を感知するためにも重要である38, 42-49)。シロアリの蟻道径の大きさは種によって異なる。頭部が
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