図2 クビアカツヤカミキリ幼虫のフラス。 幼虫は寄生木の内側から穿けた孔(排出孔)からフラス(木くずや糞の混合物)を排出する。フラスは樹液と混ざって排出孔の形状のまま押し出されることが多い。図3 クビアカツヤカミキリの脱出予定孔。 幼虫は成虫となって脱出する前年に寄生木の内側から外樹皮の一部を残して脱出孔を予め形成する。Termite Journal 2023.7 No.180 17図1 クビアカツヤカミキリの成虫(オス) 本博士論文は, サクラ類などバラ科樹木を加害する侵入害虫クビアカツヤカミキリAromia bungii(図1)の生態の解明および防除技術の開発をテーマとし, 全8章から構成される。第1章および第8章は, それぞれ総合序論および総合考察である。第2章では, クビアカツヤカミキリの寄主であるサクラ類を対象に, 寄生される確率が高い樹木の特徴について, 野外調査および統計解析により検討した。第3章では, 大阪府におけるクビアカツヤカミキリ成虫の発生消長について, 野外における成虫目撃数の推移から明らかにした。第4章では, クビアカツヤカミキリ幼虫が摂食する部位(木材組織)について, 幼虫が寄生した丸太断面の直接観察および幼虫を人工飼育した枝内部のX線アカツヤカミキリなどに特徴的な石灰質の蓋を入口にもつ蛹室の形成プロセスについて, 幼虫を人工飼育した枝内部のX線CTを用いた観察および幼虫体内の消化管などに対する蛍光X線分析により推定した。第6章では, クビアカツヤカミキリ幼虫の活動時期および蛹室形成時期について, 幼虫のフラス(木くずや糞の混合物)(図2)排出あり孔数および脱出予定孔(成虫となって脱出する前年に幼虫が用意する孔)(図3)形CTを用いた観察から明らかにした。第5章では, クビ地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所 山本優一成数の推移から明らかにした。また, 第3章から第6章の結果をもとに, 大阪府内におけるクビアカツヤカミキリの生活環を推定した。第7章では, 浸透性殺虫剤ジノテフランの樹幹注入処理によるクビアカツヤカAbstract of Doctor Thesis博士論文抄録樹木穿孔性侵入害虫クビアカツヤカミキリの生態と防除に関する研究Studies on ecology and control measures against the invasive wood-boring beetle Aromia bungii (Coleoptera: Cerambycidae)
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