図9 幼虫の摂食・穿孔部位およびサクラ類の通水部位の イメージ図。 摂食・穿孔部位(黒色), 通水部位(水色)。図10 薬剤樹幹注入の処理時期および駆除対象となるクビアカツヤカミキリ幼虫の世代(生活環が2年1化の場合)。 黒矢印は越冬世代が寄生する4月下旬の樹幹注入処理を示し, 白抜き矢印は2世代の幼虫(黄色の越冬世代および赤色の処理当年孵化世代)を同時に駆除する場合を想定した処理時期を示す。Termite Journal 2023.7 No.180 2323(2019年), 処理翌年(2020年), 処理翌々年(2021年)の(合計)は, 処理前の21.2%に減少し, 無処理区では178.9%に増加した。幼虫駆除率(補正値)(=100 -100×[処理区のフラス排出あり孔率/無処理区のフ注入処理した。処理木および無処理木(同数)の処理前および処理後4週間, 処理翌年の同時期7週間のフラス排出あり孔数を週毎に調査した。また, 処理前脱出孔(脱出予定孔を含む)数を調査した。 処理4週間後の処理区におけるフラス排出あり孔数ラス排出あり孔率])は88.2%と推定された。この結果から, 4月下旬処理は樹木内部の幼虫(越冬世代)に対して顕著な効果を有することが示唆された。一方で, 一部の処理木において, 処理翌春にフラスの排出が確認され, 処理翌々年には脱出(予定)孔数の顕著な増加も確認された。この結果から, 4月下旬処理は, 処理当年に孵化した幼虫(8月上旬)まで効果が持続しない可能性が示唆された。本種の生活環を踏まえて複数世代の幼虫を一度の注入処理で防除するためには, 処理時期を遅らせる方法が考えられる(図10)。今後の課題のひとつは, 木部の奥深くに位置する蛹室内部(図10)の幼虫に対する注入処理の効果を評価することである。その結果, 蛹室内の幼虫に対する効果が見られない場合, 越冬世代の幼虫が蛹室を形成するために木部の奥深くに移動する7月上旬までに処理することが望ましいと考えられる。第8章 総合考察 本研究は, クビアカツヤカミキリに寄生されるサクラ類の特徴, 大阪府におけるクビアカツヤカミキリの生活環の推定, 並びにクビアカツヤカミキリ幼虫に対するジノテフラン液剤の樹幹注入の有効性を示した。しかしながら, 本種の防除を一層進める上では, 成虫の寄主木探索メカニズムの解明, 生活環(化性)の変動に関わる環境要因の把握, 総合的病害虫防除(IPM)の確立に向けた防除技術の拡充, サクラ類の品種の多様幼虫の世代処理当年孵化越冬蛹室内■:成虫/卵■:幼虫-形成層周辺■:幼虫-蛹室内(脱出予定孔形成済み)□月下旬注入処理処理時期を遅らせる場合1月2月3月4月5月6月7月8月9月□□月□□月□□月蛹室形成前蛹室形成時木部形成層
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