Termite Journal 2023.7 No.1803333ルロースの化学、7.2ヘミセルロースの化学、7.3木質由来循環型プラスチックへの展開)、8章「紙・セルロースナノファイバー」(8.1紙の化学、8.2セルロースナノファイバーの化学)、9章「抽出成分」(9.1抽出成分とは、9.2化学構造と機能・利用、9.3抽出成分の多様性)、の全9章で構成されている。 森林資源の一つである「樹木」は、私たちヒトの生活にとても身近で必要不可欠な材料の一つである「木材」へと移り変わる。森林において樹木は、森林が有する多面的機能のなかで土砂災害の防止や水源涵養、生物多様性の保全といった様々な役割を担っている。最近では、カーボンニュートラル達成に向けた二酸化炭素の吸収源としての機能を耳にする機会も増えてきている。これらの機能は、森林資源の「公益的機能」であり、一方で木質資源として利用されるものは「生産機能」といわれている。基礎編では、森林がもつ資源量と木質資源としての生産量、木材の分類学的位置づけや組織構造、樹木の成長に伴って形成される辺材や心材といった樹幹の構成や木部細胞壁の主要構成成分り、木材として利用する際に重要となる密度、含水率と寸法変化、弾性と塑性といった基本的な物理的性質、さらには生活に身近な紙やバイオプラスチック、セルロースナノファイバーといった材料に関する事柄が網羅的に掲載されている。基礎編の最終章では抽出成分が扱われているが、抽出成分ときくとシロアリや木材腐朽菌に対して抵抗性を有する成分があるということをご存知の方は多いと思う。本章では、美白化粧品の原料や乳癌の治療薬として利用される機能性成分が紹介されており、非常に興味深かった。 木造建築物等のメンテナンスの現場で悩ましい害虫には、シロアリ以外にもヒラタキクイムシ類などの乾材害虫がある。ヒラタキクイムシ類は広葉樹辺材部を選択的に加害することが知られているが、そもそも針葉樹と広葉樹にはどのような違いがあるのだろう?といった疑問を抱かれた方には、本巻で紹介されている情報が大いに役立つだろう。3. 木材学 応用編 応用編は10章「木質構造」(10.1木造建築構法の種類と概要、10.2部材と接合、10.3内装における木材利用、材」(11.1軸材料、 11.2面材料、11.3大断面構造部材、としての木材、12.2触覚刺激としての木材、12.3聴覚刺激としての木材、12.4嗅覚刺激としての木材)、13章「木材乾燥」(13.1木材乾燥の基礎、13.2乾燥スケジュールと乾燥操作)、14章「木材加工」(14.1木材の特性と利用の観点からみた加工、14.2切削・研削の基本、14.3様々な木材利用における加工技術、14.4木材加工の自動化、14.5伝統的な建築や工芸にみられる木材加工、14.6木材加工における安全)、15章「接着」(15.1接着の基礎、15.2木材用接着剤の種類と特徴、15.3木材接着に影響する因子)、16章「品質管理と非破壊計測」(16.1測定システムの構成、16.2各種センサーの原理・用途、16.3木材加工における非破壊計測技術)、17章「きのこと菌類」(17.1担子菌やその他の菌類の分類と生態、17.2食用きのこ)、18章「生物劣化と耐久性」(18.1腐朽と防腐、18.2木材腐朽菌が生産するセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの分解酵素、18.3虫害と防蟻、18.4耐候性と保護塗装、18.5保存処理法、18.6木造建築における生物劣化)、19章「燃焼性と難燃・不燃」(19.1木材の燃焼特性、 19.2木材の難燃化と建築物への適用)の全10章で構成されている。 応用編では、基礎編よりもシロアリ防除の現場でもなじみ深い内容が多く取り扱われている。軸組工法(在来工法)や枠組壁工法(ツーバイフォー工法)から最新のCLTパネル工法といった木造建築工法の紹介にはじまり、内装や外装への木材利用と利用時に配慮すべき事項、集成材や合板、構造用パネル(OSB)、さらに直交集成板(CLT)などの大断面構造部材といった木質建材について網羅的な解説がつづいている。さらに、木材の収縮や変形、割れを防ぐ目的以外に生物劣化の防止といった点でも重要となる木材の乾燥、製材やプレカットにはじまり、木材保存剤の注入性向上のためにも必要なインサイジングといった木材の切削加工、集成材や合板などの木質建材に必要不可欠となる木材の接着について、その原理や方法などが紹介されている。その後、これら木材の品質管理おいて重要となる各種の非破壊計測について装置写真を交えた解説が続いている。第12章の「木材と五感」では、木材の見た目や触り心地、音色や香りが紹介されているが、木材が内装や外装の意匠や家具・楽器などに広く用いられているのは、ヒトが意識下・無意識下で、木材からの刺激を享受しているのだと感じさせられた。第17章は、基礎編でいうところの森林資源の「生産機能」のうち非木材であるキノコがテーマとなり、菌の分類・同定にはじまり、食用キノコの栽培や栄養成分などが(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)の話に始ま10.4外装における木材利用)にはじまり、11章「木質建11.4面材料の用途)、12章「木材と五感」(12.1視覚刺激
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