Termite Journal 2023.7 No.1803434紹介されている。食用キノコの多くは木材腐朽性の担子菌類であり、続く第18章では、木材が腐朽する環境要因や防止方法を皮切りに、木材腐朽菌が木材の主要構成成分(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)を分解するメカニズムが解説されている。続いて、ヒラタキクイムシといった乾材害虫、シロアリ、さらにフナクイムシといった海虫について、その生態・被害と対策が紹介されている。木材が劣化する要因は生物だけでなく、とくに屋外使用では気象による劣化の寄与が大きい。本章では、太陽光や雨水、温度、地域や方位などの因子によって劣化する作用メカニズムと、気象劣化対策となる木材保護塗装についても学ぶことができる。また、防腐や防蟻対策として木材に有効な薬液を処理することを保存処理というが、薬液である木材保存剤の浸透メカニズムや各種の処理方法、さらに木造構造物の法規や性能評価についても丁寧に取り上げられている。保存処理は主として防腐と防蟻を指すが、広くは防かびや防火なども含まれる。応用編の最終章では木材の燃焼や高温時の物理的性質の変化、防耐火性能を付与する方法や建築物への適用方法について関連用語の紹介から分かり易く解説されている。4. さいごに 基礎編も応用編も冒頭に各章を代表するような口絵があり、目でも楽しむことができる。口絵の中にはイエシロアリの写真も出てくるのだが、その生き物らしい躍動感が、その他の写真とのギャップとなり思わず笑顔が出てしまう。シロアリが口絵に登場するのは、木材と切っても切り離せない存在だからである。シロアリや腐朽に対する防除施工においては、シロアリや腐朽菌だけでなく、薬剤、建築物、施工方法、そして木材の基礎的な知識が重要である。木材に関する研究分野が広く紹介された教科書なので、興味を持たれた方は是非本書を手に取っていただきたい。また、本書の索引に掲載される用語に加え、木材学に関連する重要な用語、約4,400語の解説が木材学会ホームページで公開されているので(https://www.jwrs.org/WTerm/)合わせてご活用いただくと、より一層理解が深まると思われる。
元のページ ../index.html#38