Termite Journal 2023.7 No.1803. 結果 必須ミネラル16元素(多量ミネラルCa, Cl, K, Mg, Na, P, Sと微量ミネラルCo, Cr, Cu, Fe, I, Mn, Mo, Se, Zn), 必須ミネラルではないが全米医学アカデミーの食事摂取基準に耐容上限量が定められている3元素(B, Ni, V)10), これら以外にシロアリなど昆虫で定量されている5元素(Al, As, Ba, Pb, Si)11, 14, 15)のイエシロアリとヤマトシロアリ1頭当たりの含有量を表1, 2に示した。 職蟻における多量ミネラルの含有量を比較すると, イエシロアリ職蟻に含まれるK, P, Sの含有量にコロニーまたはコーホート間で大きな差が見られた。同様にヤマトシロアリ職蟻に含まれるCl, P, Sの含有量にコーホート間で大きな差が見られた。兵蟻における多量ミネラル含有量にも同じような傾向が認められ, イエシロアリ兵蟻ではK, Na, P, Sで, ヤマトシロアリ兵蟻ではCa, Cl, Na, Pでコロニーまたはコーホート間で大きな差があった。種間での含有量を比較すると, Cl, K, Mg, Na, Sのヤマトシロアリ職蟻の含有量は, イエシロアリ職蟻の含有量よりも少ない傾向が見られた。また兵蟻の含有量に関しては, K, Mgのヤマトシロアリ兵蟻の含有量が, イエシロアリ兵蟻の含有量よりも少ない傾向が見られた。職蟻-兵蟻階級間での多量ミネラル含有量に関しては, イエシロアリではCaの含有量が兵蟻で多いのに対しPの含有量は職蟻の方が多く, ヤマトシロアリではCaとSの含有量が兵蟻で多い傾向が認められた。 微量ミネラルでは, Co, Cr, Cu, Fe, Moの含有量に, イエシロアリ職蟻のコロニーまたはコーホート間とヤマトシロアリ職蟻のコーホート間で大きな差が見られた。また, イエシロアリ兵蟻ではCo, Cu, Fe, Iの含有量にコロニーまたはコーホート間で大きな差が見られ, ヤマトシロアリ兵蟻ではCo, Moの含有量がコーホート間で大きく異なっていた。Seはイエシロアリ職蟻と兵蟻およびヤマトシロアリ職蟻と兵蟻で検出されなかった(検出限界値=0.49ng/termite)。大顎での分布が詳細に研究されているMnとZnの職蟻あるいは兵蟻の含有量は, イエシロアリのコロニーまたはコーホート間あるいはヤマトシロアリのコーホート間で大きな差は認められなかった。種間での微量ミネラル含有量には, コロニーあるいはコーホート間に特定の傾向は認められないが, Coは和歌山県採集ヤマトシロアリ職蟻で多い, Cuは和歌山県採集イエシロアリ職蟻で多く宮崎県採集ヤマトシロアリ職蟻で少ない, Feは兵庫県同一コロニーから取り出した集団), 和歌山県日高郡美浜町の野外コロニーから採集したコーホート, それぞれからイエシロアリの職蟻と兵蟻を採集した。また, 宮崎県児湯郡新富町の公園で採集し約1年半研究室で飼育したコーホート, 鹿児島県日置市の松林で採集し約半年間研究室で飼育したコーホート, 和歌山県日高郡美浜町の松林で採集し約2ヶ月間研究室で飼育したコーホート, それぞれからヤマトシロアリ職蟻と兵蟻を採集した。 各コーホートまたはコロニーから採集したイエシロアリあるいはヤマトシロアリの職蟻10頭, 兵蟻4~10頭を入れた10 mLガラス製メスフラスコに各々硝酸 1mLを加え, 室温で10日間かけてシロアリを溶解した16)。シロアリを加えずに同様の操作を行った試料をブランクとした。シロアリ溶解液1mLとブランク1mLを各々希釈した。10倍希釈液1mLを別の15 mLポリプロピレン製遠心管に移し超純水でさらに6倍に希釈した。得られた60倍希釈液を0.45 µmメンブレンフィルター(Millex® LCR 33 mm, Merck Millipore)でろ過した。 ICP-MS(Inductively Coupled Plasma-Mass ミネラル(生体を構成する酸素, 炭素, 水素, 窒素以外の元素)の定量にはICPMS-2030(Shimadzu)を用いた。分析条件は, 高周波パワー 1.20 kW, サンプリング深さ 5.0 mm, プラズマガス 9.0 L/min, 補助ガス 1.10 min, セルガス 6.0 L/min, セル電圧 -21 V, エネルギーフィルター 7.0 V, チャンバー温度 5℃, ポンプ回転数 標準溶液には, Custom Claritas Standard(SPEX Nb, Nd, Ni, Os, P, Pb, Pd, Pr, Pt, Rb, Re, Rh, Ru, S, Sb, W, Y, Yb, Zn, Zrを定性分析モードで定量した。2.2 測定試料の調製15 mLポリプロピレン製遠心管に移し超純水で10倍に2.3 ミネラルの定量Spectrometry, 誘導結合プラズマ質量分析法)によるL/min, キャリアガス 0.70 L/min, 混合ガス 0.00 L/Low 20 rpm, ポンプ回転数 High 60 rpmとした。混合CertiPrep)を用いた。Ag, Al, As, Au, B, Be, Bi, Br, Ca, Cd, Ce, Cl, Co, Cr, Cs, Cu, Dy, Er, Eu, Fe, Ga, Gd, Ge, Hf, Hg, Ho, I, In, Ir, K, La, Li, Lu, Mg, Mn, Mo, Na, Sc, Se, Si, Sm, Sn, Sr, Ta, Tb, Te, Th, Ti, Tl, Tm, U, V, 22
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