ブックタイトルしろありNo.162

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概要

しろありNo.162

30 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 4 . 7 N o . 1 6 22. 3. 脱皮後の形態計測 前兵隊期間での成長過程を明らかにするために,JHA 処理で分化した直後の前兵隊をオイルペイントでマーキングした。静止脱皮はガットパージした職蟻をあらかじめ隔離しておき, 個体が脱皮した直後にマーキングした。計測は脱皮後から0, 1, 3, 7日目に行い, 全個体の成長過程を記録した (前兵隊脱皮: n= 19, 静止脱皮: n = 10)。本実験ではCCD カメラ (296HIM-1N, HOGA, Kyoto, Japan) で撮影した画像データを元に, 頭長, 頭幅, 左大顎長, 前胸背板幅, 前肢脛節長の5部位を計測した。計測データは線形混合モデルをあてはめた後 Tukey の多重比較による統計解析を行った。2. 4. 頭部外部構造の観察 脱皮間期での成長に伴うクチクラ構造の変化を明らかにするために, 前兵隊脱皮, 静止脱皮共に脱皮直後と脱皮後7日目, 脱皮後14日目の頭部表面のクチクラを走査型電子顕微鏡(JEOL Ltd., Tokyo, Japan)で観察した。2. 5. 頭部内部構造の観察 頭部表面で観察されたクチクラ構造の変化における詳細な組織学的観察を行うため, 前兵隊脱皮, 静止脱皮共に脱皮直後, 脱皮後7日目, 脱皮後14日目の頭部を用い, 正中矢状面でパラフィン切片を作成した。切片は顕微鏡(BZ-9000 HS All-in-one fluorencemicroscope, KEYENCE, Osaka, Japan)で観察し, クチクラの厚さは画像解析ソフト(BZ-Ⅱ Analyzer,KEYENCE, Osaka, Japan)で計測した。3. 結果と考察3. 1. 脱皮後の形態計測 前兵隊脱皮, 静止脱皮共に脱皮後から7日間の 頭長, 頭幅, 左大顎長, 前胸背板幅, 前肢脛節長の5部位における成長過程を記録した(図1-a)。その結果, 前兵隊の頭長が7日間伸び続けた一方で, 静止脱皮後(職蟻)の頭長は全く伸びなかった(図1-b)。最終的に前兵隊の頭長は脱皮後14日目まで伸長し続けた(図1-b)。その他の部位は全く伸びないか, 脱皮直後からの一過的な伸長であったことから, 脱皮間期における成長は前兵隊の頭部に特異的な現象であることが示唆された。3. 2. 頭部外部構造の観察 前兵隊における頭部伸長の原因を明らかにするため, 走査型電子顕微鏡を用いて頭部クチクラの表面構造を詳細に観察した(図2)。脱皮直後の前兵隊にはクチクラのしわ状構造が見られ, これは脱皮後7日目には展開していたことがわかった(図2-b)。一方で静止脱皮直後の頭部にはしわ状の構造が見られないことから, クチクラのしわ状構造が展開することで前兵隊の頭部伸張が起こっていることが示唆された。3. 3. 頭部内部構造の観察 前兵隊頭部が伸長する過程において, しわ状構造の展開がどのような組織学的過程を経て起こるのかを明らかにするため, クチクラ断面を組織切片によって観図1 前兵隊脱皮と静止脱皮の頭長における脱皮後の成長過程。黒丸は前兵隊脱皮, 白丸は静止脱皮を示す。異なるアルファベットは有意差があることを示す (P < 0.05, Tukey's test)。